日大の反則タックルはなぜ起きた?選手と監督の主張が違う?会見から問題を探る!

連日のようにメディアにとりあげられている日本大学(以下日大)の選手による、関西学院大学(以下関学大)の選手への悪質な反則タックル問題。何が原因でこのような悲劇は起きてしまったのか、会見を通してわかったことから考えていきたいと思います。

日大選手による反則タックル問題の概要

5月6日にアメリカンフットボールの日大対関学大の定期戦第1クオーターにおいて、日大の宮川泰介選手がパスを投げ終えた関学大のクオーターバック(QB)奥野耕世選手に対して背後から猛烈なタックルを行いました。これにより奥野選手はひざなどを負傷し全治3週間の診断を受けました。その後も宮川選手は反則行為を行い、退場になりました。
問題のプレーはネット上で拡散されて大きな話題となりました。日大側は「危険なプレーは指示していない」と故意ではないことを主張しました。5月19日に内田監督は辞任することを表明しましたが、指示があったかどうかについては深く言及していませんでした。しかし、5月22日に宮川選手が行った会見で事態は大きく動きました。

日大選手のタックルは監督・コーチの指示?

問題のプレーがあった試合以降、日大と関学大の間で文書による回答などは行われましたが、日大側は大学をあげての会見は行いませんでした。しかし22日に宮川選手が個人としての謝罪の意味も込めての会見が開かれました。そこで語られたのは「タックルは監督・コーチの指示であった」という内容でした。

弁護士による前提の説明

会見冒頭の弁護士による前提の説明によると、大学からの聞き取り調査はありましたが、アメフト部からの聞き取り調査はなかったとのことです。19日に内田監督が辞任を表明した際には「指導者と選手の受け取り方に乖離が起きていた」と話しましたが、ではなぜ部としての聞き取りがないのかを疑問に感じたそうです。
そこで、このまま部としての聞き取りはないと判断した宮川選手側は会見を開き、真実を話すことを決めたそうです。この時は監督の指示ではないということが報道されており、選手が勝手にやったことという認識が広がっていました。ですが監督やコーチから「なぜああいうことをしたのか」という質問等はなかったそうです。

日大選手の会見:「QBをつぶせ」の指示

宮川選手の言葉は謝罪から始まりました。そして試合の3日前から練習を外され監督から「試合に出るなら相手のQBを1プレー目でつぶすこと」が条件であるとの旨をコーチから言われていたことを明かしました。秋にも関学大との試合があるのでケガをすれば得であると言われた宮川選手は、この指示を「ケガをさせろ」ということだととらえました。

選手を追い詰めた監督・コーチ

会見から、宮川選手は監督・コーチからかなり追い詰められていたと感じました。練習を外されていたこと、監督から日本代表を辞退しろと言われていたこと、さらにコーチから「QBをつぶすので使ってくださいと監督に言え」と言われ、後がないと感じた宮川選手は監督に言うと「やらなきゃ意味ない」と返されたことからもわかります。
そして試合中、宮川選手が実際に問題のプレーをした時は何も考えられない状態であったそうです。最初のタックルの後もつぶせの指示だけが頭に残り、再びQBへ反則行為をしました。また以前におとなしいなどと言われたことから意識的に攻撃的な行為をし、ついに退場となりました。

相手への配慮が一切なかった監督・コーチ

さらに会見で宮川選手は、試合後に監督が「自分がやらせた、相手のことを考える必要はない」と発言したことを明かしています。騒動後に監督・コーチによる謝罪が行われていないことも含めると相手がケガをしようが特に何も思っていなかったことがわかります。

日大監督・コーチの会見:指示は「思い切りぶつかれ」の意味

22日に宮川選手が会見を行ったことを受けて、翌23日に日大アメフト部内田正人前監督と井上奨コーチによる会見が開かれました。被害者や関係者に対する謝罪はありましたが、議論になっている指示については両者とも「ケガをさせる」ものであったことは否定しています。

会見での質疑応答:監督

監督はまず記者団からの質問に対して、タックルは私からの指示ではないと答えました。また問題のプレーに関してはボールを見ていてわからない、「やらなきゃ意味ない」や「1プレー目で」等の発言に対しては言ってないであるとか、最初からいけの意味であると説明しました。
また、すぐに謝罪等の対応を行わなかった点に対しては「経験からまずは自分から電話するが、相手から質問状が来たので、経験から文書のやり取りで話し合っていくものと思ったから」ということを理由にあげました。その結果対応が遅れたとのことです。

会見での質疑応答:コーチ

コーチに関しては、「QBつぶせ」などと発言したことは認めているものの、それは思い切りぶつかれの意味で言ったと説明しました。「ケガすれば得」などの発言は言ってないであったり、彼の闘争心を引き出すために少し過激な表現になったりしてしまったと語っていました。

選手と監督・コーチ両者で指示に対する主張の食い違い?

選手と監督・コーチの会見の内容を見てきたわけですが、両者で主張が違っていることがわかります。「ケガしたら得」の発言の真偽や指示に対する見解、さらに会話に関して監督・コーチ側は覚えていないと言っている点など、謎は深まるばかりです。
しかし、指示の意図がどうとか発言の真偽以前に、起きてしまった事実に対してどう向き合うかが大事だと思います。どちらの会見が真実かは当事者でないとわかりませんが、多くの人が宮川選手の会見に彼の誠実さを感じたことと思います。一方監督・コーチ側は宮川選手の発言に対して誤魔化しながら否定している印象も受けました。

日大広報のコメントに違和感?司会は無理やり会見を打ち切る

宮川選手の「1プレー目でQBをつぶせ」の指示があったことに対して日大広報が「つぶせは本学アメフト部で思い切り当たれとして練習でも使われている」とコメントをしました。誤解を招いたことに対する謝罪コメントでしたが、そもそも練習で使われていたのならば宮川選手が誤解することはなかったでしょう。
「つぶせ」が使われるのはフットボールではあることですが、宮川選手がケガをさせると解釈したのならば日大では使われていなかった、もしくはケガさせろと思わせるほどの圧力があったと考えられます。コーチは思い切りを大事にしてほしいとの言い分でしたが、それでもあのタックルは悪質であると感じます。

記者にブチ切れ!司会を務めた日大広報

23日の監督・コーチの会見は司会によって強制的に打ち切られましたが、この時司会を務めたのが日大広報の米倉久邦氏です。実はこの方も以前は記者だったらしいです。質問を繰り返す記者に対して「やめてください」や「あなたしつこいです」と記者に対して怒りをあらわにするシーンもありました。
そして監督・コーチの回答にまだ疑問を感じていた記者たちに対して会見の打ち切りを宣言しました。ある記者が「日大のブランドが落ちるかもしれませんよ」との発言をしたところ自信満々に「落ちません!」と答えました。この対応によりさらに炎上することとなりました。

タックルは監督の指示を示す音声が存在?真相に迫れるか

どうやら5月6日の試合後の内田前監督を取材した際の音声データが存在するようです。音声では宮川選手の危険なプレーを監督自らが指示し、肯定するような発言がなされていました。これは監督・コーチの会見での発言を覆すようなものになるでしょう。

音声データの内容は?

音声データではプレーに対して「これが僕のやり方」や「内田がやれって書いてもいいですよ」、さらに「宮川はよくやった」と話しています。さらに関学大島内監督の「あれで試合を壊された」というコメントに対して、「何年か前の関学が一番汚いでしょう」と真っ向から反論しています。
これはケガをさせる意図があると思えます。仮にケガをさせる意図はなかったとしても、相手がケガをしたことについて謝罪はありません。起きた事実に対してこのような発言は、監督自体がそれを認めており、望んだ結果であるとも読み取れます。しかし捜査機関による結果が出るまで真実だと言い切れません。それでも大きな一歩だと思います。

理事長の会見はない?日大に経営者責任はないとされる理由

5月25日には日大の大塚吉兵衛学長が会見し、女性が乱入して学長に迫るハプニングもありました。大塚学長は自身を運動部の最高責任者としましたが、大学の組織として見ると実際は常務理事である内田前監督よりも地位は下です。大塚学長は理事長の会見の予定はないとしました。経営者としての責任はないのでしょうか。
本来、部活動は大学の名を背負っていながらも扱いは「課外活動」であり大学の責任外であると見られます。日大を一つの会社と見た際に、部活はその責任の範囲外となります。しかし社会的な目線はどれも同じ「日大」の名を持っていることには変わりません。ですので理事長の会見はこのままないのかということも気になるところです。

Googleマップで「日大」が「日本タックル大学」に…

大塚学長の会見が行われた25日前後、Googleマップで「日本タックル大学」と書き換えられていたという指摘が相次ぎました。また、静岡県三島市の日大三島高校・中学校も同じ被害にあったとのことです。関係ない学校や、一般生徒に迷惑のかかる行為ですし誹謗中傷と変わらないと思いますので絶対にやめましょう。

なぜ日大選手はタックルの指示を拒否できなかった?

あのタックルは反則行為であると宮川選手はわかっていたはずです。ではなぜ拒否できなかったのでしょうか。宮川選手にとっては監督・コーチには意見できず、その指示に対して自分で善し悪しの判断ができなくなるほど怖い存在であったことが会見の質疑応答で述べられています。
おそらくこれは宮川選手に限ったことではないでしょう。部全体として監督の言うことは絶対であり、それ自体に正しいか正しくないかは関係ない、というのが現実ではないでしょうか。宮川選手は相当追い詰められていたので尚更です。そしてこれは日大アメフト部に限らない話であると思います。

日大タックル問題から見える「絶対服従」の文化

タックル問題の原因を探る上で一つポイントとなるのが上の立場の者には「絶対服従」であるという文化だと思います。宮川選手は会見で「指示を拒否できなかったのは自分の弱さ」と語りましたが、同じ状況にある人は多いと思います。
一昔前はいわゆるスパルタ指導も相まってこのような考え方が主流だったでしょう。しかしそれでは悪いことでも逆らえないからやるしかないということもあります。なぜ拒否できないのかと宮川選手を責める声もありますが、上の立場の言うことは絶対という空気がそれを作り出しているのではないでしょうか。

日大選手のタックルはどれだけ危険?命にかかわることも

日本アメリカンフットボール協会の定めるタックルの定義は以下のようになります。基本的にボールを持った選手に対してのみ可能です。今回の場合はパスの後のタックルでしたので当然反則です、反則であるためにまさかされるとは思わず無防備であったでしょう。そのため危険性はとても高まります。

タックルとは,手または腕を用いて相手側のプレーヤーをつかんだり,抱え込んだりすることである。http://americanfootball.jp/wp-content/uploads/2017/09/93722a280ec73c9070f0ac8157de31f3.pdf

またタックルによる死亡事故も過去に起きています。特にアメリカでは競技人口が多いこともあり、死亡事故も多いです。何十キロもある身体が猛スピードで突っ込んで来ればとても危険です。今回の事件も下手をしたら死亡事故につながっていた可能性もあります。

日大アメフト部の監督はどんな指導であったか?

日大アメフト部ではどんな指導が行われてたのか、少なくともスパルタ指導であったことは間違いないでしょう。宮川選手は会見で「アメフトが好きという気持ちが大学から徐々に変わってきた」と語ったり、29日に出された日大選手声明文でも「監督らの指示に盲目的に従っていた」とあります。監督は絶対であると全員が思っていたのでしょう。

選手を取り巻く報復の怖さ

今回の事件に関して、実は関学大に対する報復ではないか?という説もあります。昨年の甲子園ボウルで日大の1年生QBが相手の執拗なマークにあって脳震盪になったというものです。6日の試合後の内田前監督の取材でも報復を思わせる発言がありましたが真相は定かではありません。
スポーツの報復ですと、他にも野球のメジャーリーグで死球を食らったら、次の回にぶつけ返すということもあります。このような報復の多くは関係ない選手が巻き込まれます。また6日の後に宮川選手に対する報復を行うといった脅迫などもネット上でありました。報復の怖さは時に選手に深い傷を与えてしまうこととなります。

関学大側の会見では問題をどう見ている?

関学大側は事件や日大側の会見をどう見ているのでしょうか。負傷した選手の父、奥野康俊さんは会見で指示があったのか真相を明らかにしたいと話し、被害届を提出したことを明らかにしました。宮川選手に対しては会見後「よく真実を語ってくれた、立派な態度であった」と評価して、選手に対し寛大な処分を求める嘆願書をSNSで公開しました。

一方、監督・コーチに対して奥野さんは「刑事告訴も検討する」と厳しい見方をしています。関学大の島内監督は5月26日の関学大の会見で日大から再回答書を受けて「内容が矛盾している、真実とは認識できない」と不信感を表しました。日大との定期戦も当面中止する考えを表明しました。

負傷した関学大選手が復帰!「正々堂々と勝負出来たら」

関学大の奥野選手が27日の関大戦において復帰したというニュースが流れました。幸い後遺症もなく実戦に戻ってこれたのは吉報でしょう。日大との問題について質問された際、監督・コーチに対しては「すみません」と明言を避けましたが、宮川選手に対しては「選手として戻ってきて、正々堂々とルールの中で勝負出来たら」と話しました。

日大側の処分はどうなったのか?

5月29日、ついに関東学生連盟が臨時理事会を開き、日大側に対する処分が決定されました。内田前監督、井上前コーチの二名が永久追放に相当する一番重い「除名」、森ヘッドコーチは「資格剥奪」の処分が下されました。そして日大のチーム、宮川選手に対しては2018年度シーズン終了までの公式試合の出場資格停止の処分となりました。
処分は下されましたが、未だ真実は明らかとなっていない部分も多いです。宮川選手は今後アメフトはやらないと言いましたが、いつか処分が解けましたら戻ってきてほしいと思います。そして奥野選手と、今度は正々堂々とフィールドで戦うことを多くの人々が望んでいることと思います。