ストックホルムシンドロームとは?犯人に特別な感情が芽生える心理 エンタメ

ストックホルムシンドロームとは?犯人に特別な感情が芽生える心理

ストックホルム症候群という言葉をご存じでしょうか。誘拐事件や監禁事件などの被害者が、加害者である犯人に対して好意的な感情を抱くことを指します。どうしてこんなことが起こるのでしょうか。具体的にはどんな事例があるのでしょうか。

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ストックホルムシンドロームとは?

ストックホルムシンドローム(Stockholm syndrome)とは、誘拐事件や監禁事件などの被害者が、加害者である犯人に好意的な感情を抱くことをいいます。当事者でない人から見たら理解不能な感情ですが、1つの精神疾患として認められるようになりました。

誘拐事件や監禁事件といった犯罪は後を絶ちません。そして、そういった犯罪が起きると、このストックホルム症候群により事件が複雑になることがあります。

でもなぜ、普通は憎いはずの犯人に対し、好意的な感情が発生してしまうことがあるのでしょうか。

ストックホルムシンドロームとは?

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実はこのストックホルムシンドロームは、誘拐事件や監禁事件などの被害者が「生き残るための戦略」として、無意識に被害者が犯人との間に心理的なつながりを築いてしまうのではないかと考えられています。

このストックホルムシンドロームという名前は実際過去に起きた強盗事件からつけられました。やはり普通の人にとっては異常と思えるこの現象はマスコミで話題になり、世界中に知られました。

その後なぜこういった現象が起こったのか、精神医療の世界で研究され現在ではどんなメカニズムで起こるのかわかってきました。この現象のことを米国の精神科医フランク・オッシュバーグ氏がストックホルム症候群となずけました。

ストックホルムシンドロームの由来

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ではどんな事件だったのでしょうか。1973年8月、スウェーデンのストックホルムで銀行強盗事件(ノルマルム広場強盗事件)がありました。

この事件において犯人は立てこもりをしますが、その立てこもりに対し監禁された被害者が協力的になってきて犯人に友情関係を抱きます。

警察の捜査に協力するのではなく犯人の側についてしまうなどの行動が見られました。そのため、犯人に対し好意を持つような現象をこの事件の地名からとってストックホルムシンドロームと呼んでいるのです。

心的外傷後ストレス障害に分類

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ストックホルムシンドロームは、うつ病などの精神障害ではなく、強度のストレス状況で起こる「心的外傷後ストレス障害」という分類になります。

好意を持ったり、好きになってしまうのということではなく、生き残るための手段として無意識に行動してしまうものです。
こういった事件の中で、極限的な環境に追い込まれている被害者は、犯人に対して反抗的な態度を取るより、好意的な態度を取っていた方が、自分の命が助かる確率は高くなるので、必然的にそのような行動をとるのです。

ノルマルム広場強盗事件とは

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この言葉の由来となった事件の名前自体は「ノルマルム広場強盗事件」といいます。このノルマルム広場がストックホルムにあるのでストックホルムシンドロームというのです。

銀行強盗事件でしたが人質をとり、数日にわたり人質は監禁されました。
その事件当初はただただおびえるだけであった被害者たちは、時間がたつにつれて事件を解決してくれない警察に不信感を持ち、最後には犯人に友情すら抱くようになっていきます。
では、一体どんなことが起こっていたのでしょうか。

事件概要

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1973年8月23日に刑務所から仮釈放中だったジャンエリック・オルソンは、銃を持ちストックホルムの銀行に押し入りました。

女性3人、男性1人を人質として銀行に立てこもります。そして、友人で銀行強盗の罪で服役中だったクラーク・オロフソンの解放を要求します。

警察はこの要求を受け入れて、犯人との合流をさせます。 しかし、犯人は銀行を完全に封鎖し、食料の提供も拒否してしまいます。
事件発生から4日目に、警察は「投降しなければ最終手段を取る」と最後通告をします。

ところが、その翌日、人質の一人である女性行員から首相宛に電話があり、警察に対する不満を述べ逆に犯人たちを助けるように求めました。

しかし、同日夜、警察は催眠ガスを使用し犯人を逮捕し、人質も無事確保され事件は解決します。

人質たちの行動

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この事件において、人質たちは事件後も犯人をかばい、警察の捜査に対して非協力的でした。
また、立てこもりの間、人質たちは犯人に協力し、自ら警察に銃を向けるなどしていたことが、後に明らかになっています。

この事件において、最初は脅されていた人質たちも、しばらく経つと恐怖が好意的な感情に変わっていくことが明らかにされました。

人質は、捕らえられた段階で突然「非日常的な空間」に置かれ、話す・食べる・トイレに行くなどの全ての自由を奪われます。 その後、それらを犯人から自由を少しですが与えられるようになります。 するとそれを受け取る際に、どこか幼児のときの母親に対する感覚のようなものを抱くのだと思われています。

ストックホルムシンドロームの名付け親である精神科医フランク・オッシュバーグ氏によれば、ストックホルム症候群には3つの要素があるといいます。

・人質は犯人に対する愛着や、時には愛情が芽生える。
・その愛情に報いる形で、犯人も人質を気遣う。
・両者がそろって「外の世界」に対する軽蔑を抱くようになる。

事件後、懲役10年の判決を受けた犯人のオルソンは、その後タイに移住しましたが、 なんと、そこへ当時の人質2人が訪ねてきたこともあったといいます。
非日常空間で芽生えた連帯感が、数十年経っても変わらなかったということのようです。

ストックホルムシンドロームになる理由

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なぜこんなことが起きるのでしょうか。大まかな流れとしては、自分の生死が相手に握られる極限の精神状態に陥りますが、命の危機を経て優しい言葉などをかけられると善悪の判断基準が壊れてしまい、自分の生死を握る相手に好感・好意を抱いてしまうというものです。

例えば自分を虐待する母親に好意を抱いてしまうというようなこととにています。児童相談所の報告によると、保護した子供たちが「ママを責めないで、自分が悪いから」などと自分に暴行を加えた両親を庇うケースがあるといいます。

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また、犯罪の取り調べにおいてやってもいない犯罪を自供してしまうということがあります。 厳しい取り調べの後に優しくされると、自分が認められたとおもいこんでしまい、やってもいない犯行を自供してしまったりもしてしまうことがああるのです。

ちょっと広義にとらえるならば、日本人は、「根回し」や「段取り」や「空気を読む」といったあまりにも精緻に作り上げられた日本の社会構造に、子どもの頃から「人質」になっているとも言えなくもないでしょう。

ストックホルムシンドロームの反対「リマ症候群」

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リマ症候群はストックホルムシンドロームとは間逆で、犯人が人質に対して特別な感情や親近感を抱くようになり、人質に対する態度が優しくなる現象のことを言います。

つまり、ストックホルムシンドロームは被害者が犯人に好意を抱き、リマ症候群は犯人が人質に好ましい感情を持つという違いがあります。

これはストックホルムシンドロームにくらべるとめずらしいケースではありますが、極限状態にいる犯人と被害者の共依存から発生するという点では共通点があります。

リマ症候群とは?

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簡単に言うと、「ストックホルムシンドローム」は被害者が加害者に対し好意を持つことで、その反対が「リマ症候群」です。

1996年にぺルーのリマにある日本国大使公邸で人質事件が起こり、その際にこの現象が起こったことで「リマ症候群」と呼ばれるようになりました。

4か月間という長い期間にわたり人質と犯行団との生活が続きます。事件の際は連日、日本のマスコミにも取り上げられました。

この事件をモチーフとした小説(米小説家アン・パチェット『ベル・カント』)もあるほど有名な事件です。

リマ症候群の由来

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1996年にぺルーのリマにある日本国大使公邸で開催されていた天皇誕生日祝賀パーティーの最中に左翼のテロ組織14名が乗り込み、爆発物と拳銃を武器に公邸を乗っ取りました。事件発生当初600人の人質を取りました。その後、多くの人質を解放しましたが、日本人を含む大使館にいた要人たち72人がその後4か月にわたり監禁されます。

各国の大使や政府関係者が127日間に及ぶ監禁生活を強いられたのですが、テロの実行者である犯人たちは知識層である人質たちと共に過ごすことで、これまで知ることもなかった他国の文化や習慣などに興味を持ちます。人質に勉強を教えてもらうようにさえなりました。犯人たちは人質を先生として慕うようになります。そのため、ペルー軍特殊部隊が突入した時には犯人たちは人質に危害を加えることなく全員射殺されたとのことです。

監禁されている間、日本人の人質がラジオ体操、音楽、ゲーム、勉強を教えたり、日本からの差し入れのお菓子を一緒に食べたりと双方仲良く奇妙な共同生活を送っていました。人質が解放された後、解放を喜ぶアルベルトフジモリ大統領とは反対に、人質はみな犯行団の死を悼み、悲しそうな顔で記者会見に臨みました。

美女と野獣はストックホルムシンドローム?

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美女と野獣の簡単なあらすじは以下のようなものです。

ワガママで、人を見た目で判断する心の狭い王子は、魔女に野獣の姿に変えられてしまいました。ある時、ベルの父が道に迷って城に入り込み、野獣にとらわれてしまいます。
そして、父を解放してもらうためにベルは身代わりとなって城に残ります。心を閉ざした野獣とベルはお互いを嫌っていましたが、段々に内面の優しさに気付き、お互いを好きになっていくというおはなしです。

囚われの身となったベルが、野獣を好きになっていくことから『ストックホルムシンドローム』では?と言われています。美しいお姫様の話でありながらなかなか深い意味を持たお話ですね。

ブラック企業を辞められないのはストックホルムシンドローム?

勤め先の会社がブラックでつらいというという人は世の中にたくさんいます。

そして、「そんなに辛かったら辞めればいいのに」と誰もが思うはずなのですが、「辞めさせられる」か「辞めざるを得ない状況に追い込まれる」まで辞めない人が多いのです。

心理学では認知的不協和の解消といわれる理論があります。これは、「同意した自分を正当化する心理」のことです。
今勤めている会社がブラックであることはわかっているのですが、雇用契約に同意して「入社する」という意思決定をしたのは自分なので、辞めることを躊躇してしまうのです。つまり、自分の選択が間違っていたことを認めたくないのです。

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だから、他人から見れば明らかにブラック企業でも、入社を自分の意志で決めてしまったから、社員はなぜか「うちの会社は素晴らしい」と愛社精神に溢れていることも珍しくないのです。

プライベートな時間を奪われ、精神を病んでしまいかねないのにもかかわらず、自分の選択は間違っていなかったと思い込もうとする心理状態がストックホルムシンドロームに近いとも言えます。

ストックホルムシンドロームの治療法は?

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ストックホルムシンドロームが精神疾患とされたのは1973年であり比較的新しい病気のため、治療法が完全には確立されていません。

ただし、ストックホルムシンドロームに至る状況は、外部と切り離されて密閉された空間であることから、環境を変えるのが1番の治療法であるとされています。

ストックホルムシンドロームとしてのマインドコントロール状態から抜け出せない人は、カウンセラーや家族、友人が根気良く説得や説明に当たるしか治療法いまのところありません。周囲の人が親身となり心から接することで、当事者が本当のことにようやく気付くことができるのです。

ストックホルムシンドロームは生き残るための術

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ストックホルムシンドロームは、非常事態でのパニック状態を無意識に避けるためのいわば「セルフマインドコントロール」から起こっているといえるでしょう。

また、ストックホルムシンドロームは事件に巻き込まれたような特別なケースだけでなく、日常的な家庭や職場でも発生しうる現象です。

自分自身無意識のまま判断基準を失う現象ですが、こういった現象があるということを理解するだけでも、自分がストックホルムシンドロームにかからないための予防策になるでしょう。

善悪の基準とはとても流動的で自分でしっかり持っているようでも非常時には生きるために一般的な善悪の判断基準すら無意識に変えてしまうものなのです。