帝銀事件とは?平沢貞通は冤罪で真犯人は731部隊?謎の真相とは 社会

帝銀事件とは?平沢貞通は冤罪で真犯人は731部隊?謎の真相とは

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現在も事件の再審を目指す人々は講演など活動を続けている

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平沢貞通の遺族を中心として現在も活動を続ける「平沢貞通を救う会」は、帝銀事件に関するホームページを作成・公開し帝銀事件を知らない若い世代にも事件を知ってもらう取り組みをしています。

遺族にとって最も耐えられないことは事件が風化してしまうこと。それによって平沢貞通が永久に死刑囚の汚名を着せられたままになってしまうことでした。

それを防ぐためにも支援者らは各大学を回って公演活動を続けています。

平沢貞通は本当に犯人だったのか

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帝銀事件における世間の認識は様々です。現在では平沢貞通は無実だったのではないかと考える人が多数を占めていますが、一方で731部隊が犯人だったとする説に疑問を呈する意見もあります。

GHQの圧力によって事件とは無関係な平沢が犯人にされてしまったとするのが平沢無罪説の意見ですが、そもそも軍関係者なら大勢のいる前より秘密裏に毒殺する方を選ぶというのが軍部擁護派です。

擁護派の主張を前提に事件を振り返ってみると確かに軍関係者がやったにしては人目に付きやすく二度も失敗しています。しかし平沢にもアリバイがある以上犯人と断定できません。真相は闇の中です。

食い違う毒物の鑑定

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帝銀事件における謎は、他にもあります。凶器として使用された毒物が特定されていないのです。このことが帝銀事件をより複雑にミステリアスな事件へと彩っているのです。

毒物の鑑定は東京大学の古畑種基と慶應義塾大学の中舘久平によって行われました。どちらも青酸化合物というところまでは判明していますが、両者の意見には食い違いがみられるのです。

否定する声も多い青酸カリ説

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中村正明は自身の著書で、帝銀事件で使用された毒物は青酸カリウムである可能性を否定できないと論じています。しかしこの意見に対して疑問の声を投げかける研究者も多いです。

青酸カリウムには即効性があり、服用してすぐに体に異常を来たします。しかし帝銀事件では毒物を飲まされた行員たちはすぐに異変が起きたわけではなく、一分という時間差がありました。

このことから、犯行に使用された毒物が青酸カリウムであるとする中村正明の考えに否定的な専門家が多いのです。

731部隊が関与?アセトアノヒドリン説

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アセトアノヒドリン説は当初警察が捜査対象としていた731部隊犯行説に信ぴょう性を与える説として現在でも支援者らの間で語り継がれています。

警察が得た有力情報というのは陸軍9研でアセトシアノヒドリンを開発していたという事実でした。この薬物は服用して1分から2分程度遅れて反応が出るもので、青酸カリウム説より有力です。

また解剖でも青酸化合物までしか絞り込めないことや犯行に使用された器具から犯人の手口に至るまですべて軍秘密科学研究所の作成した指導書通りでしたがGHQの圧力で捜査対象から外れました。

2薬を使用するバイナリ―方式説

ジャーナリストの吉永春子が発表したバイナリ―方式説は、毒性を持たないシアン化物と毒性の強い酵素を合わせたものです。体内に含まれる水分と結合することで毒性の威力を発揮します。

これは731部隊犯行説とは別にアメリカ軍の人体実験説として新たに持ち上がった説ですが、この説についても不確かな部分は多く有力とされるところまではいっていません。

その理由として、犯行当時にはまだ酵素の研究が進んでいなかったことや人体への影響の安定性、さらには犯行時に使用された湯のみ茶碗からは青酸化合物が検出されていなかったことが挙げられます。

真犯人の疑いがある人物

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平沢貞通の犯行説を裏付ける明確な証拠はなく、平沢犯行説を覆す材料はその後のマスコミや支援者らの調査で複数見つかっています。

それでは平沢が犯人出なかった場合、真犯人の疑いとして考えられるのは誰なのでしょうか?実はその後の調査で3人の人物が帝銀事件の容疑者として浮上していたのです。

731部隊の医学博士・諏訪敬三郎または諏訪敬明

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1人目は従来から疑われている731部隊の医学博士・諏訪敬三郎または諏訪敬明。事件発生当時捜査に参加していた捜査官・成智英雄の手記によるものです。ただし手記ではS中佐となっています。

毒物に関する知識から経歴やアリバイ、人相書きなどを総合的に考えると犯人はS中佐以外に考えられないと指摘しています。しかし部隊に所属した人間の証言ではS中佐は存在していないといいます。

しかし731部隊には当時諏訪敬三郎という名前の人物と諏訪敬明という人物の2名がおり、成智英雄はこの2人を混同しているとの指摘もあります。

1954年の茨城県大量殺人事件の犯人

帝銀事件から6年後の1954年10月11日、茨城県で発生した大量毒物殺人事件です。この事件は放火と一家9人が青酸性の薬物によって命を奪われたことから第2の帝銀事件とも呼ばれています。

この事件で容疑者として浮上したのは印刷工の緑志保という人物で、彼には前科8犯という犯罪歴がありました。帝銀事件と同様に「保健所から来た」と言っていますが模倣した可能性もあります。

緑志保は栃木県内の旅館で客の荷物から金品を盗んだ際に身元が判明して逮捕に至りますが、護送中に青酸カリを服用し自殺します。帝銀事件と類似点は多々ありますが、犯行は素人との指摘もあります。

歯科医O

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Iという人物が近所の歯科医で気づかぬうちにヒ素を盛られていたという体験をもとに、その歯科医Oが帝銀事件の真犯人ではないかという説です。

GHQ占領統治時代の謎を深追いするミステリー・ハンター原渕勝仁の主張する説ですが、ごじつけ感が強すぎるとして、信ぴょう性は弱いと言われています。

Oという人物がIに対してヒ素を持っていたことが本当であればもっと大ごとになっていなければならない上に警察の介入も不明です。すべてIの証言を頼りに歯科医O犯行説を主張しています。

帝銀事件が日本に与えた影響

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帝銀事件によって影響を受けたのは平沢貞通だけではありません。帝銀事件はその後の日本の社会においても大きな影響を与えています。

遺体の写真の報道が猛抗議され、以降は遺体の写真の公開が抑えられるようになった

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帝銀事件発生当初、現場となった椎名支店にはたくさんの野次馬の中に報道陣の姿もありました。当時はまだ現場保存の認識が甘かったこともあり、報道陣も現場に立ち入ることは許容の範囲でした。

そのためまだ現場に被害者の遺体があっても報道陣は撮影することが可能で、その写真を新聞に掲載することも珍しくありませんでした。

しかし青酸性の毒物による被害者の遺体は見慣れない者にとってはショッキングです。遺体の写真を見た多くの読者から報道機関宛てに抗議が殺到し、その後遺体の写真が報道されることは減っていきました。

1954年の茨城県大量殺人事件

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1954年10月11日に茨城県で起きた大量毒物殺人事件。この事件の犯人は被害者の農業一家に保健所の人間を騙って青酸性の毒物を飲ませています。その後家ごと放火しました。

犯人と目された男はその後別件で逮捕されますが、護送中に自ら青酸カリを服用して自殺してしまいます。犯行の手口が帝銀事件と似通っていることから弁護団が調査していました。

しかし犯人の自殺によって帝銀事件との因果関係は不明のまま闇に葬られてしまいました。茨城の大量毒物事件は帝銀事件の6年後に起きた事件であることから「第2の帝銀事件」と呼ばれました。

帝銀事件の現場跡地は現在どうなっている?

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帝銀事件の舞台となった東京都豊島区の帝国銀行椎名支店は現在どうなっているのでしょうか?その跡地について取り上げていきます。また跡地周辺の地元の評判についても合わせて紹介します。

帝国銀行の跡地は現在マンションになっている

帝銀事件という戦後日本を代表する怪事件の舞台となった東京都豊島区帝国銀行椎名支店の跡地には現在どこにでもあるごく普通のマンションとなっています。

帝銀事件の舞台ですが、それに関する説明書きはどこにも見当たりません。知らなければそのまま見過ごしてしまいそうな路地に現場の跡地はあります。

周辺は物騒で治安が悪い?

帝銀事件の舞台となった椎名支店の跡地に建つ賃貸マンションに住んだ人物のエピソードがネット上で取り上げられています。その人物はその場所が帝銀事件の跡地とは知らなかったようでした。

この跡地では以前から頻繁に窃盗が相次いでいて警察に被害届を出しても動いてくれないといった話や、犯人が特定されても仕返しを恐れて皆が黙っていると言った話もあるようです。

また放火や事件がたびたび起きているといい、この一帯は昔から暴力団事務所や朝鮮系も多く何かと治安が悪いことでも有名だといいます。警察も深く関わらないようにしていると噂されています。

帝銀事件をあつかう作品

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帝銀事件は政府や権力に対する反感が高まっていった1960年から様々な文化人や知識人によって平沢貞通の犯行説を覆す論調が多く出てくるようになりました。

それに合わせて平沢貞通が無実であることを前提とした映画やドラマが数多く制作されていきました。

映画「帝銀事件 死刑囚」

1964年に日活で制作、放映された映画「帝銀事件 死刑囚」。平沢貞通を救う会が結成され、社会全体が平沢の再審請求を求める機運が高まっていた頃に制作された映画です。

監督は熊井啓。映画撮影前に熊井は宮城拘置所を訪れ平沢に面会しています。劇中では主人公の平沢貞通を信鉄三が演じています。出演者は他に内藤武敏や井上昭文、伊福部昭などがいました。

テレビドラマ「帝銀事件・大量殺人獄中32年の死刑囚」

1980年にはテレビ朝日で「帝銀事件・大量殺人獄中32年の死刑囚」と題してドラマが放送されています。松本清張原作の「小説帝銀事件」やその他エッセイを中心にドラマ化されたものです。

主人公の平沢貞通を仲谷昇が演じています。この他ドラマでは「刑事一代」でも帝銀事件は扱われていますが、主人公の平塚八兵衛は平沢に拷問紛いの取り調べを行った人物として知られています。

エッセイ 坂口安吾「帝銀事件を論ず」

作家の坂口安吾によって書かれたエッセイ「帝銀事件を論ず」は事件発生直後の1948年3月1日に中央公論誌上で発表されました。

このエッセイの中で坂口安吾は犯人は知能が低く、戦争という悲劇がなければ犯人の精神も荒むことはなく帝銀事件のような悲劇は起こらなかったと論じています。

しかし犯人に薬物に関する一定の知識があったこと、犯行の手口などから坂口安吾の主張は的外れとの指摘も多いです。

帝銀事件をモチーフに書かれたミステリー小説

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帝銀事件は平沢貞通冤罪においては社会派作家などが立ち上がり世間の注目を集めていますが、それ以外にも数多くのミステリーやサスペンス小説のモチーフとなっています。

松本清張「小説帝銀事件」

昭和を代表する作家・松本清張が1959年に書いた「小説帝銀事件」は、帝銀事件の犯人として逮捕された平沢貞通が死刑判決を受けた後に書かれた、警察とは違う視点に立って書かれた作品です。

平沢の犯行説に異議を唱えることは裁判判決を否定することですが、当時は裁判に対する信頼性が失われていた時代で、他にも広津和郎や宇野浩二らが実際の事件の判決に異議を唱える作品を著わしています。

横溝正史「悪魔が来りて笛を吹く」

戦前から戦後にかけて活躍した昭和を代表するミステリー作家・横溝正史の著した金田一耕助シリーズの1作「悪魔が来りて笛を吹く」。70年代のミステリーブームで今作品も人気を博しました。

物語は毒物事件の容疑者と目された子爵が失踪し、残された家族の身に次々と凄惨な殺人事件が繰り広げられるというもので、冒頭の天銀堂は宝石店となっていますが「帝銀事件」がモデルです。

天銀堂事件では犯行の手口を実際の帝銀事件になぞらえて書かれていますが、その後のストーリーは横溝正史の完全なオリジナルストーリー。実際の帝銀事件とはまったく別の方向に進んで行きます。

京極夏彦「魍魎の匣」

妖怪研究家やアートディレクターとしても知られる作家・京極夏彦が1996年に第49回日本推理作家協会賞長編部門を受賞した「魍魎の匣」。奇妙な匣に憑りつくものを落とす物語です。

全編を通して帝銀事件を扱っているわけではありませんが、この小説の中で帝銀事件に関与したとされる人物に触れる記述があります。

エラリー・クイーンによって海外にも紹介された

エラリー・クイーンの短編小説の中に日本を舞台にした「東京の大銀行強盗」という作品があります。名探偵エラリー・クイーンが世界各国を旅し、現地の事件について聞いたり推理したりします。

「東京の大銀行強盗」は帝銀事件をモデルに書いています。本作品は日本では東京創元社から「エラリー・クイーンの国際事件簿」という短編集で出版されているので読むことが可能です。

またエラリー・クイーンの1人フレデリック・ダネイが来日した1977年には平沢貞通の再審請求を支援する松本清張と対談を行っており、帝銀事件についても話を聞いていました。

帝銀事件は731部隊の犯行か?平沢貞通の犯行か?依然として謎は残されている

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終戦まもない日本全国を震撼させた大量毒物殺人事件「帝銀事件」。警察は当初731部隊を疑い捜査を進めていましたが、有力情報にも関わらずGHQの圧力を受けて捜査は中断します。

その後画家の平沢貞通を犯人として逮捕します。しかし平沢は事件当日にアリバイがあったことを主張するも、証言者となり得るGHQ軍曹はアメリカへ帰国してしまいます。

多くの謎を残した帝銀事件は平沢貞通の死刑確定後、松本清張をはじめとした多くの著名人によって冤罪の可能性が指摘されていますが依然として真相は闇の中です。今後の進展が望まれます。

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