姉歯事件とは?関係者や姉歯物件の現在は?偽装はなぜ無くならない?

「センターワンホテル半田」が県や会社に対して損害賠償を求め民事提訴した

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2002年に営業を開始した愛知県の半田市にあるビジネスホテル・センターワンホテル半田は、姉歯元一級建築士が構造計算をしたホテルのうちの1棟でした。

そのため2005年に耐震強度偽装問題が明るみに出た後に独自に精査を行い、結果、耐震性に問題があることが発覚。2006年には一度取り壊したのちに、再建築をして2007年度より営業を再開しました。

この件についてホテルの運営会社は、愛知県を相手取って、確認業務に過失があったとして損害賠償請求を求めました。

2009年2月24日、行政側の過失が認められる

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2009年2月24日に行われた公判では、名古屋地方裁判所は愛知県およびコンサルタント会社の過失を認めて、両者に合計で5,700万円の賠償額を支払う旨の判決を下しました。

ホテル側の要求が認められた結果となったこの判決は、裁判所が行政の過失を認めて損害賠償を命じるという非常に珍しいものです。

2010年10月29日、名古屋高等裁判所が総研の単独責任として賠償を命令

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しかし翌年の2010年10月24日に行われた2審では、名古屋高等裁判所は愛知県には過失がなかったとし、コンサルタント会社の総研の責任をより重く認定しました。

偽装を見抜けなかったのは総研に重大な過失があったとして、単独で1億6,000万円もの賠償命令がなされました。ホテル側は責任の所在を知りたいとして最高裁に上告しましたが、これは棄却されています。

東日本大震災でも姉歯物件は倒壊しなかった?

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2011年3月11日、東北沖を震源として、東日本全土に被害を及ぼした東日本大震災が発生しました。この地震では数多くの建物が倒壊し、瓦礫となりましたが、姉歯物件は全棟倒壊を免れたと言います。

偽装問題発覚時には震度5で倒壊と言われていた姉歯物件が、どうして無事だったのでしょうか?ここではその真相について紹介していきます。

手抜きの天才とも揶揄される姉歯元一級建築士

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一部では姉歯元一級建築士のことを「天才」とする見解もあり、これは皮肉ではありますが、同氏の偽装の手腕が優れていることにちなんでいます。

姉歯元一級建築士の構造計算は「姉歯ジェンガ工法」と揶揄されるほど、建物が倒壊しない絶妙なバランスで鉄骨を抜き、予算を削減していたと言われているのです。

このことから姉歯元一級建築士は手抜きの天才、とも呼ばれていました。

東日本大震災のとき、姉歯物件は無事だった

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2011年3月11日に東日本大震災が起きた際、姉歯物件は全棟倒壊せずに被害を出さなかったとされています。

耐震強度の偽装が取り沙汰された際には、震度5で全壊と言われていた姉歯物件ですが、実際はヒビ1つ入らなかった建物の方が多かったのです。

しかし、これは姉歯物件が優れていたというわけではなく、震災時に残っていた物件は既に補強がされていたり、精査の結果強度に問題なしと判断されたものが多かっただけとも言われています。

現在も解体されず残っているマンションが存在する

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2005年に耐震強度の偽装が問題になった当初、姉歯元一級建築士が構造計算を建造物で偽装が疑われた物件は21棟ありました。そして、その中の7棟は未着手であったことから、工事自体が中止となっています。

しかし、その後の調べて全国で90棟を超える建物に耐震構造上の欠陥があることが判明。

このうちの何棟かは耐震補強が行われたことが明らかにされていますが、そのまま放置されている建物も多いと考えられています。

姉歯事件の関連マンション・関係者のその後

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姉歯事件で問題となった欠陥のあるマンションを購入してしまった住民の方々は、現在どのような暮らしをしているのでしょうか?

ここでは、姉歯事件の最たる被害者とも言える偽装物件のマンション住民のその後をを紹介していきます。

「グランドステージ藤沢」は藤沢市が一部費用を負担し2010年に工事終了

姉歯事件が大きく報道された当時、幾度となく名前の挙がった神奈川県のグランドステージ藤沢。このマンションでは、その後も入居者たちによって、再建についての是非が議論されてきました。

再建をしようにもヒューザーが破産をしてしまっているため、再建にかかる費用を住民が工面する必要があり、購入ローンが残っている状態で再建ローンを抱えることに二の足を踏む世帯が多かったのです。

しかし、藤沢氏が再建費用の一部を負担することで取り壊し、再建が決定し、現在は住民も再入居して生活を始めています。

ヒューザー元社長の小嶋進は不動産会社に務め始めた

姉歯事件のあおりを受けて、多額の負債を追って倒産することとなったヒューザー。

そのヒューザーの元社長である小嶋氏は、会社を畳んだのちに弟の不動産会社で、マンションの清掃や管理人の仕事をしていたと言います。

当時を振り返り小嶋氏は、業務は部下に任せていたために建築に対する知識が不足しており、その状態でマスコミ対応をしたのは軽率であったと述べています。

現在は太陽光発電事業を行っている?

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地道に生活をしようと決めていたという小嶋氏ですが、ある時小学生の孫が姉歯事件を知ってしまい、どのような悪いことをしたのか?と尋ねてきたと言います。

そのことにショックを受けて、少しでも孫に誇れる人間になろうと再起を決意したそうです。現在、小嶋氏は休耕地を利用して、小規模な太陽光発電の設備を経営しています。

姉歯事件が日本に与えた強いインパクト

姉歯事件は2008年に関係者の裁判が全て終わったことで、1つの区切りをつけました。

この事件は後の建築業界に対して影響を与えたのはもちろんのこと、行き過ぎた報道の中で事件とは無関係の姉歯元一級建築士の妻が死亡したことから、報道の在り方にも一石を投じました。

ここでは、姉歯事件がその後の日本に及ぼした影響について紹介していきます。

建築基準法が厳格化・法改正された

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姉歯事件の後、2006年には建築基準法と建築士法の2つが改正されました。この2つの法改正は、同事件で失墜した建築士の信頼回復と、建造物の安全確保を目的として行われています。

2006年の改正で建築基準法では、ピアチェックと呼ばれる第三者機関による構造検査が義務付けられるようになり、3階建て以上の集合住宅には中間検査も義務付けられました。

このことによって、構造計算書の偽造などが難しい環境が整備されました。

姉歯秀次の妻の死亡に関係したといわれるマスコミの過熱報道への問題提起

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姉歯事件の騒動の最中、事件の注目度を高めるためにグランドステージ藤沢等に入居して被害に遭っている人々と対比するように、姉歯元一級建築士の生活ぶりが華美であると騒ぎ立てられました。

そしてその火の粉は、事件の加害者では無い姉歯元一級建築士の妻にまで行き、最終的には彼女を自殺にまで追い込んだのです。

このことは報道の在り方に問題を提起する事件となりましたが、この後もメディアに対する法の整備や、共通のガイドラインの制定はされていません。

国交省を厳しく批判するヒューザー元社長

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事件後の足取りが全くつかめなない姉歯元一級建築士とは対照的に、ヒューザーの元社長である小嶋氏は様々なメディアのインタビューに応じてきました。

ここではヒューザーの元社長である小嶋氏の、事件後の言動について紹介していきます。

当時、姉歯秀次への怒りはわいてこなかったという

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小嶋氏は姉歯元一級建築士に騙されて、知らぬうちに耐震強度の偽装に手を貸してしまったのでは?という見方をする人もあります。

この見方が正しいのかどうかはさておき、小嶋氏自身は、事件発覚当時に姉歯元一級建築士に対して怒りや憎しみというのは湧かなかったそうです。

姉歯元一級建築士のようなことをする人は一定数いるために行政のチェックがあるとして、むしろ小嶋氏はチェック体制の方に疑問を感じたと言います。

問題は民間検査機関や国交省だという

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小嶋氏が問題視しているのは、チェック機関として建造物の安全性を保障するはずであった民間検査機関や、国が偽装をまんまと見逃していることだと言います。

姉歯事件に関しても、姉歯元一級建築士に対してよりも、グランドステージ藤沢が建ってしまった後で構造の欠陥に気が付いたイーホームズに対して怒りを覚えたと主張しているのです。

国交大臣認定のプログラムに欠陥あり

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小嶋氏は、国道交通省が配布していた構造計算プログラムそのものに、重大な欠陥があることを指摘しています。

行政に提出する構造計算文書を作成する際に使うこのプログラムには、耐震強度の偽造などがあってもエラーが出ず、そのまま文書作成ができるという欠陥がありました。

さらに、構造の欠陥は行政や民間検査機関が構造計算プログラムを用いて、構造計算書をチェックすることで簡単にわかるものの、行政などはこのプログラムを所持すらしていなかったと言います。

ヒューザー元社長は国の責任を訴え続けている

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小嶋氏は現在も、国に対して建築物の構造確認、安全性確認の確実性を求めていきたいと述べています。

建造物の安全確認というのは確実性のあるチェック体制で、2重3重でなされるべきであると小嶋氏は主張しているのです。

姉歯事件関連動画集

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姉歯事件とは事件当時どのように報道されていたのか、はっきりと覚えていないという方も多いことでしょう。

ここでは当時の事件の報道についても触れることができるような、姉歯事件の関連動画を紹介していきます。

「強度偽造物件の実態検証事例〈姉歯事件〉」

こちらの動画は、偽装が疑われた川崎市のグランドステージ江川で建物の耐震強度を検証するという、TV朝日系列の報道番組「報道ステーション」の放送内容を切り取ったものです。

平面図や構造計算書の偽造が疑われる点を紹介しており、実際にどのような方法で耐震強度の偽装が行われたのかが分かりやすい内容となっています。

「平成18年01月19日 国土交通委員会」

こちらの動画は2006年1月19日に行われた、国土交通委員会のTV中継の様子を収めたものです。

この時委員会では参考として総研の四ケ所氏らが呼ばれており、政治献金問題や、イーホームズに構造計算書の確認を委託した経緯などが焦点となりました。

「姉歯秀次元建築士へ単独インタビュー(2005年)」

こちらの動画はNHKのニュース7にて、姉歯元一級建築士が単独でインタビューに応じた様子が紹介されています。

姉歯元一級建築士がどのように偽装に手を染めていったのか、自らの口で語っている貴重な映像です。

「耐震偽造事件ヒューザー」

こちらの動画では、ヒューザーの元社長である小嶋氏が住宅の建築や、住居の理想について語っている様子が見られます。

現在は建築業界から引退している小嶋氏ですが、当時はどのように住居について理想を持っていたのかが分かる内容となっています。

姉歯事件当時だけではない耐震偽装問題

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姉歯事件が大々的に取り上げられた後も、建造物の偽装問題は度々起こっています。ここでは、日本で起こったその他の建造物の偽装事件について紹介していきます。

1996年竣工の「新生マンション花畑西」の耐震偽造による行政訴訟

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2009年には、1996年に竣工した久留米市の分譲マンション・新生マンション花畑西において、耐震強度が国土交通省の定める基準の3分の1以下であることが判明しました。

同マンションの管理組合は、このような瑕疵のあるマンションの建築を許可した久留米市に対して、建築会社に建て替えを命じさせるべく、行政訴訟を起こしています。

2007年、アパホテルの耐震偽造問題

2007年には全国展開をしているビジネスホテルチェーン、アパホテルの京都市内の2棟において、耐震強度が国土交通省の基準の7割程度しか満たされていないことが発覚しました。

アパホテルは同年に問題があったホテルについては補強工事を済ませており、建築基準法の安全基準を満たした後に、営業を再開しています。

2015年、トーヨーゴム工業のデータ改ざん問題

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2015年には、東洋ゴム工業が建築物の免震機構の用途に使うゴム製部品の性能データを改ざん、安全性を偽装していたことが、国土交通省の調査で明らかになりました。

この部品を使用して建てられたビルや病院などの建造物は55棟にも上り、当時の同社の社長であった山本卓司氏らは引責辞任をしています。

2018年、KYBの過去15年もの改ざん発覚

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2018年には株式会社KYBで、15年もの間に渡って、同社が開発する免震装置のデータが偽造されていたことが明らかになりました。

KYBが開発した免震装置は全国に普及しており、市庁舎などでも使用されていたことが判明しています。この件に関してKYBは、2年を目途に問題のある免震装置を交換していくことを発表しています。

なぜ起こる?過去にあった様々な偽装問題

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現住建造物で安全性が偽装されているとして、大きな波紋を呼んだ姉歯事件。偽装問題というのは他の業界でも多数起きており、報道されるたびに国民を不安に陥れてきました。

ここでは、姉歯事件以外に起こった様々な業界の偽装問題について紹介していきます。

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