「ナンバ歩き」とは?スポーツ界でも生かせる!練習法や効果について

江戸時代以前は、日本ではナンバ歩きが一般的な歩き方だったといわれていますが、それは本当なのか。また、ナンバ歩きはスポーツでも効果的だとし、取り入れられています。ナンバ歩きがなぜスポーツや武術に効果的なのか、練習法やその効果などについて見ていきます。

ナンバ歩きとはどういう歩き方?

ナンバ歩きとは、右手と右足、左手と左足をそれぞれ同時に出して歩く歩き方です。日本の歌舞伎の動作である六方(ろっぽう)にみられる歩く動作です。

ナンバ歩きとはどのような歩行法?方法は?

ナンバ歩きは、通常の歩き方であるそれぞれの手と足の動きとは、逆の歩き方になります。古武術研究家でも知られる甲野善紀さんの著書などによって一般的に知られるようになりました。

ナンバ歩きの「ナンバ」の由来

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ナンバの名前の由来には諸説あって、そのひとつは江戸時代に歌舞伎の六方の所作のひとつである「難波」に由来しているというものです。

歌舞伎でいわれている六方とは、派手に大きく手を振り、足を強く踏みしめながら歩く演技であり、主に舞台から花道を通って帰っていく時に行われています。この時、同じ側の手足を同時に動かして歩く動作をします。

動画で見るナンバ歩きの歩き方

江戸時代までのナンバ歩きは、基本的に腕を動かさず、腰のねじりを使わない歩き方だったそうです。この歩き方は坂道では効率的で、現代人の坂道の歩き方では腕を振る分疲れるのだといいます。

腕をふらないナンバ歩きは、腕はお腹の位置で固定してこぶしを軽く握り、前に出した足と同じ側の手を上に向け、反対の手は下に向けた状態を交互に繰り返します。

その歩き方だと、前から人がぶつかってきたり、咄嗟の時の反応で身体を避けることが可能になるそうです。現在の身体をねじりながらの歩き方は、実は効率があまりよくないといいます。

江戸時代まではナンバ歩きが主流だったと言われている

ナンバ歩きは、江戸時代以前の日本では一般的であり、広く行われた歩き方でもあります。明治に入ってからは、西洋的生活様式の移入と共に失われていったとされています。

しかし、この説は厳密な検証からではなく、甲野善紀さん個人の武術理論から生まれた「伝統の創造」の類と見なされています。甲野善紀さんによれば、武術はナンバ歩きの動きが基本となっているといいます。

近年ではスポーツ界でもナンバ的な動きが取り入れられている

ナンバ歩きを基本とした身体の使い方は、伝統的武術や陸上競技などに応用することが可能で、スポーツ科学の観点から研究が行われています。ナンバ歩きはスポーツ界では、レベルアップにつながる種目もあります。

たとえば、冬季オリンピックのノルディックスキーの競走やバイアスロン競技にも、ストックで身体のバランスを取りながら速く坂道を登る場合に、ナンバ歩きを使って駆け込むシーンが見られるようになりました。

江戸時代の人は本当にナンバ歩きだった?嘘?

甲野善紀さんの説では、江戸時代の人はナンバ歩きだったとうことですが、その事に異を唱える人もいます。

ナンバ歩きは、片方の手足を同時に前に出すため、武術や歌舞伎の動き、農作業など特定の場合にしか使わなかったという考え方です。

江戸時代も現代と同じ歩き方だった?

確かにナンバ歩きというのは、右手右足を同時に前に出す歩き方ですから、現代の歩き方からしたら、かなり特殊な歩き方だといえるでしょう。

ですからナンバ歩きは、武術や歌舞伎などの特殊な動きの時だけに用いたのではないかという考え方もあります。ですから江戸時代の人は、普段では現代人と同じような歩き方をしていたのではないかという人もいます。

いずれにしても、江戸時代には現代のような動画はもちろんありませんし、当時の文献にも、そうした歩き方の資料などほとんどなかったそうです。ですから想像でしか語ることができません。

ナンバ歩きは昔の服装の問題でもあった

江戸時代の人が、ナンバ歩きだったのではないかという理由に、当時の人は着物を着ていたのでナンバ歩きの方が着物が乱れないし、武士は帯刀していましたから、この歩き方の方が便利だっただろうというわけです。

絵画の表現の一つだったとも言われている

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ナンバ歩きが特殊なものだとして、絵画の表現の1つだったとも言われています。

現代の人がナンバ歩きの効果は?

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ナンバ歩きは、江戸時代までの人達が、歩くことへの負担をできるだけ減らすために一般的だった歩き方だといわれています。

プロのスポーツ選手も一般の人も、普段からナンバ歩きを意識することで、長時間歩いても疲労を感じなくなるといいます。

腰痛や膝への負担の少ない歩き方と言われている

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ナンバ歩きは、安定性のある歩き方ですから、腰痛や膝への負担を少なくし、快適で安全な歩行を行うことが可能です。

階段や坂道も楽になる

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多くの人は普通に階段や坂道を歩くと、きついと感じてしまいますが、ナンバ歩きではそのきつさが2割程度抑えられます。ですから、階段や坂道が楽になるといいます。

体幹が鍛えられる

日本ウォーキング教会専門講師の上野敏文さんによると、ナンバ歩きは古来の日本人の歩き方で、実に理にかなった歩き方だといいます。

通常歩行ではつま先で地面を蹴るため、ふくらはぎ等の小さな筋肉を使いますが、ナンバ歩きは、かかとで押し出すから、肩関節と股関節が連動して広い範囲の体幹、つまり大きな筋肉を動かして進みます。

ですから、体幹が鍛えられるとともに、効率よくパワーを出せることができて、疲れにくく、長時間歩けるようになるそうです。体幹を使うほどに腰回りの筋肉が鍛えられるので、腰痛や膝痛の予防になるそうです。

ダイエットの効果も期待できる

ナンバ歩きを実践することで、姿勢がよくなり下腹に重心が乗った歩き方ができるようになります。徐々に重心が背骨に乗りかっこよく歩くことができ、ダイエット効果にも期待できるといいます。

江戸時代の飛脚は、平均身長150センチほどで1日100kmをナンバ走りしていたといいます。その走りは腕はほとんど振らなかったのではないかといわれています。高橋尚子さんもナンバ走行を実践していました。

ナンバ歩きは右脳と左脳を刺激し、脳を活性化しダイエット効果もあり、ストレス解消やボケ防止にもなるそうです。

ナンバ歩きの練習法

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ナンバ歩きは通常歩行と違った歩き方ですから、普段から練習する必要がります。

小さな歩幅で歩く

ナンバ歩きは身体のねじりを使いませんから、どうしても歩幅は小さく歩くことになります。最初は腰に手を当てて、手を振らずに歩く練習をします。

骨盤と肩を前後に動かす歩き方になる

ナンバ歩きは、手を振らない歩き方によって、骨盤と肩を前後に動かしながら歩きます。ナンバ歩きのことを骨盤歩きともいいます。

ポイント

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ナンバ歩きのポイントは、目はまっすぐ遠くを見て膝は脚先と同じ方向、足のかかとは上げません。お尻は横に振らずに股関節を大きく前後に広げた立ち方となります。

ナンバ歩きの稽古法・練習法の動画

ナンバ歩きの稽古するには、竹馬や竹ぽっくりなどを使うといいのですが、それだと見た目に恥ずかしこともあり、また日常的な練習には向いていません。

そこで、胸の前辺りで片方の手で、片方の手首を握った状態で歩く練習をします。

ナンバ歩きの基本は、腕の振りを使わずに身体の体幹だけで効率よく歩くことですから、腕を動かさないで歩くために、腕を固定してしまうといいようです。

スポーツ界でのナンバ歩きについて

ナンバ歩きは現在さまざまなスポーツ界で取り入れられています。

バスケットボールでは相手に動きを読まれない効果もある

桐朋高校のバスケット部の金田監督は、バスケットの未経験者ばかりの弱小チームをたった1年でインターハイへ導いた人です。金田監督の練習法にはナンバ歩きを取り入れたものがあります。

金田伸夫さんの著書には「ナンバの身体論」や「ナンバ若返り法」といったナンバ歩きを推奨しているものを多く出していますがそのきっかけは、ナンバ歩きを基本とした武術の達人である甲野善紀さんとの出会いでした。

ボールに応用

甲野さんの古武術の導入から一ヶ月で、選手たちのプレーに変化が出てきました。そのひとつが「パスモーション」が全く見えなくなったというものです。

それまでは、スピードを重視するあまり、身体をひねった速いパスを出していましたが、そのためにパスモーションが読まれていました。

しかし、古武術の動作では、準備動作がなくなって正確にパスをつなげられるようになったそうです。そのようにして、桐朋高校のバスケット部に強力な武器が生まれました。

登山にも使えるナンバ歩き

ナンバ歩きは、もともと「山岳民族である日本人の古来の歩き方」だとする考え方があります。一般的な歩き方は、身体の中心に1本の軸があって、それを回転しながら歩いています。

ナンバ歩きでは、左右の2本の軸を交互に動かして歩く方法です。このナンバ歩きは袴がはだけない歩き方でもあります。腕を組んでいると疲れないといいますが、これは山岳ガイドの人や登山の上級者がやっています。

なぜ腕を組んで登山をすると疲れないのかというと、軸が安定するからです。軸が安定すれば、バランスを取るために使う体力が要りませんから、疲労が少なくて済みます。ストックを使うナンバ歩きの練習法もあります。

マラソンにも生かせる

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甲野善紀さんによると「ナンバ走りには体幹のねじれがなく、走るための全体の流れをスムーズにできる利点がある。見た目には腕を振っていないが、身体の中で降っているという感じ」だそうです。

一方、左右交互の走りでは、身体の中にねじれが生じ、それが全体の流れにブレーキをかけてしまい、腕を振る事で止まる瞬間を作ってしまうそうです。

一方、ナンバ走りでは身体の動きを止めませんから、スタミナの省エネにつながると、甲野善紀さんはいいます。

現代の歩行は自然な歩行なのか

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江戸時代以前の人は、子供の頃からナンバ歩きだったというのは、少し無理があるのではと思ってしまいます。しかし、赤ちゃんが歩き始めるのに誰も教わらずに歩くのがナンバ歩きだといいます。

子供がだんだんと成長するにしたがって、親の歩き方を見て真似するようになるようです。現代人は西欧文化に馴染んでから通常歩行が習慣化し、子供がそれをまねているのだそうです。

つまり通常歩行というのが、自然な人間の歩き方ではないということかもしれません。少なくとも江戸時代の飛脚など走る時は、ナンバ走りで現代のような身体をひねった走りはしていなかったようです。

ナンバ歩きはそれほど難しくない

江戸時代以前の人達は、皆ナンバ歩きだったと言われていますが、同じ側の手足を同時に前に出して歩くナンバ歩きは、現代人には馴染みにくい歩き方ですからあまりやってみようとは思いません。

しかし、ナンバ歩きの基本である腕を振らない歩きを身につけることで、周りの目を気にしないで練習でき、またダイエットや若返りにも効果的だということで、興味を持つ人もいるようです。

ナンバ歩きはぎこちないような歩き方ではなく、普段のウォーキングでも生かせる歩き方で、自然とその効果が期待できるものです。