江戸しぐさは嘘?種類一覧と捏造疑惑の理由や正体について!掲載教科書は?

『江戸しぐさ』という言葉を一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?江戸しぐさの正体とは何か、道徳の授業で教わる意味とは何か、気になる部分に迫ります。さらに、実は江戸しぐさというのは存在せず、嘘であるという噂についてもまとめます。

江戸時代から伝えられている江戸しぐさとは?嘘?

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『江戸しぐさ』それは古く江戸時代から伝わる町人から生まれた、民衆に知れ渡ったマナーのようなものでした。

しかし今や道徳の教科書にまで載っている江戸しぐさの正体が、嘘で塗り固められたものであると噂され始めました。江戸しぐさに含まれた意味や江戸しぐさが抱える疑問とは、一体何なのでしょうか。

道徳の教科書にも載っている江戸しぐさの意味

『江戸しぐさ』とは、江戸に住む町人たちの日常生活におけるマナーのことです。NPO法人「江戸しぐさ」理事長の越川禮子さんはそのように主張しています。

しぐさは有名なものから有名でないものまで、実際に現代のマナーとしても受け継がれているようなものも多くあります。そんな江戸しぐさは、道徳の教科書にも掲載されています。

文部科学省によると、教科書に『江戸しぐさ』を載せる理由は、礼儀について考えてもらうためだということです。

公共マナーのポスターや公共広告機構にも取り上げられている

江戸しぐさは公共マナーのポスターに起用されたり、公共広告機構(ACジャパン)が地下鉄の電飾や平面媒体にて使用したり、CMで図解をアニメーションに使用していました。

公共広告機構(ACジャパン)は「江戸しぐさのように時代を超え、世代も超えて伝わっていく」をコンセプトにしていたため江戸しぐさを取り上げていたのです。

江戸しぐさは嘘だった?その正体とは

江戸時代の町民マナーと言われている江戸しぐさは、そもそも嘘だったという噂があります。一体どういうことなのか解説していきます。江戸しぐさの正体に迫りましょう!

書籍「江戸しぐさの正体」では江戸しぐさはUFOよりもあり得ない

原田実さん著の書籍「江戸しぐさの正体」では、江戸しぐさとはUFOよりもあり得ない現実逃避から生まれたと思われる架空の伝統である、と書かれています。

そのように書いている理由は、江戸しぐさという言葉が生まれた経緯と江戸しぐさというマナーに違和感を感じることからです。

江戸しぐさとは1980年代の現代に芝三光に発明された、歴史的根拠の全くないものであるという批判の声があります。

「江戸しぐさ」は偽史であり、オカルトであり、現実逃避の産物として生み出されたものである。我々は、偽りを子供たちに教えないためにも、「江戸しぐさ」の正体を見極めねばならないのだ。

(引用:amazon)

そもそもなぜ江戸しぐさは文書として残っていないのか?

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江戸しぐさとして現代に伝わっているものに関して、実際文書として残っているものはありません。文書が残っていない理由は諸説あります。

  • 戦争によって『江戸っ子』が途絶えてしまったため、当時の資料は焼き捨てられ残っていない
  • そもども江戸しぐさの資料は残っていないし、口頭で伝承されていきた(NPO法人「江戸しぐさ」理事長の越川禮子説)

主な理由としてはこのようなものですが、芝三光は1980年代においては文献によって確認することができるとも説いています。

江戸っ子虐殺なのか、自ら引いたのか主張が異なっている

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越川禮子が唱えた『江戸っ子虐殺』説は、幕末の江戸城無血開城の際、江戸溝(江戸商人によって組織されたもの)のネットワークを危惧した新政府が、江戸っ子たちを大量虐殺したというものです。

この時江戸しぐさに関しての古文書も焼き払われてしまったという話があるのです。この時勝海舟によって逃がされた江戸っ子たちは、「隠れ江戸っ子」として潜伏したそうです。

芝三光説では、無血開城により新政府が国を作っていく中、江戸の文化やマナーをしる江戸っ子たちは多くを語らなかったため、自然と引いていき廃れていったと言われており、それぞれの主張は異なっているのです。

食い違いが多いことから江戸しぐさは捏造である可能性もある

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江戸しぐさには様々ありますが、江戸の文化と照らし合わせていくと本当にその仕草があったかどうか定かではないと言われています。

江戸特有の文化の中で江戸しぐさが生まれるには考えにくい食い違いが多く見られるのです。その違和感については後ほど詳しく解説いたします。

江戸しぐさは嘘だと主張した人々

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江戸しぐさの存在に根拠がないと言われ始めていることはわかりましたが、「江戸しぐさの正体」を書いた原田実さんだけでなく『江戸しぐさは嘘だ!』と主張している人が他にもいらっしゃいます。

落語家の柳家三之助

江戸しぐさを嘘だと主張している方1人目は、落語家の柳家三之助さんです。柳家三之助さんは2014年9月12日、自身のTwitterでこのようにツイートしました。

「江戸しぐさなんてものがもし本当にあったら、噺に出てこねえわけがねぇだろって少し思ってた」とツイートしました。噺家だからこそ癒えることのできる説得力のある理由です。

飯間浩明

江戸しぐさを嘘だと主張している方2人目は、飯間浩明さんです。飯間浩明さんは『三省堂国語辞典』委員のひとりで、2015年4月17日にあるツイートをしました。

2012年頃『三省堂国語辞典』においても「江戸しぐさ」を項目として立てようとしたが、その主張に信頼性は薄いと判断し、見送りになったと述べている。

(引用:Wikipedia)

このように勉強のための教材ともなる国語辞典を作る際に、江戸しぐさの存在に関して信頼性が薄いと判断されたことは、「江戸しぐさが嘘のもの」という存在に信ぴょう性を深くさせました。

田中優子

江戸しぐさを嘘だと主張している方3人目は、田中優子さんです。田中裕子さんは、江戸文化研究家であり法政大学総長も務めています。

彼女は江戸しぐさに関して肯定的な発言をしていたこともありましたが、2015年6月25日に放送されたTBS『NEWS23』にて江戸しぐさは空想であると否定発言をしました。

碓井真史

江戸しぐさを嘘だと主張している方4人目は、碓井真史さんです。碓井真史さんは、新潟青陵大学大学院の教授をしており、「江戸しぐさは専門家から見ればあまりにも馬鹿げている」と発言しています。

ただ、様々な人から出ている反論の意見に関しても「反論しても学術的な業績にはならない」都市伝説にも似た江戸しぐさが嘘だと信じさせることも困難であり、肯定も否定もできるほどの要素がないと考えています。

呉座勇一

江戸しぐさを嘘だと主張している方5人目は、呉座勇一さんです。呉座勇一さんは、国際日本文化研究センターで助教授をしています。

彼は「江戸しぐさは偽史である」とはっきりと断定してます。反論している人が誰なのかではなく、史料批判ができるほどの素材があるかが大切なことでるとも、発言しています。

さらに、原田実著書『江戸しぐさの正体』に関しては、史料批判ができるものとして推奨しているとのことです。

イラスト付きで見る主な江戸しぐさの種類一覧

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ここからは有名な江戸しぐさについてひとつづつ解説していきたいと思います。一体どんなものがあるのでしょうか?

傘かしげ

まず1つ目の江戸しぐさは、『傘かしげ』です。こちらの仕草は想像してもらいやすいかと思います。イラストのように、雨の日に人と道をすれ違うときお互いの傘を外側に傾け、濡れないようにすることを言います。

こぶし腰浮かせ

2つ目の江戸しぐさは、『こぶし腰浮かせ』です。こちらはあまり想像しにくいかと思いますが、何気なく現代でも行なっている所作のひとつです。

乗合船などで、後から乗る人のために”こぶしひとつ分だけ”腰を浮かせ席を作ることを言います。現代では、席を詰める際に中腰のまま移動する感覚と同じと言えるでしょう。

時泥棒

3つ目の江戸しぐさは、『時泥棒』です。こちらは、約束も取り付けずにいきなり相手を訪問することや約束の時間に遅れるを言い、相手の時間を奪うといったものです。

相手の時間を奪うことは重罪とされており、まさしく十両の罪とされていました。

喫煙しぐさ

4つ目の江戸しぐさは、『喫煙しぐさ』です。禁煙の場所ではもちろん、喫煙が可能な場所でもその場に非喫煙者がいれば”タバコは吸わない”といった気づかいのしぐさでした。

江戸しぐさが嘘だと言われる疑問・反論一覧

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先ほど紹介した江戸しぐさは、現代でも自然ととっている行動だったりしますが、江戸しぐさではなく嘘なのではという声が出ています。疑問や反論を詳しくのぞいていきましょう!

傘かしげの疑問・反論

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傘かしげに関してはこんな疑問や反論があります。和傘は、江戸末期においても高級品であり贅沢品で、江戸っ子たちはほとんど傘を持っておらず、頭からかぶる笠や藁などで雨を凌いでいたという声があります。

さらに和傘は洋傘よりも簡単にすぼめることが可能なため、わざわざかしげる必要がなかったという声もあります。

また、路地で傘かしげを行うと、人には水が当たらなくとも家や土間に水をぶちまける可能性がありました。このように、江戸の生活では実用性のないしぐさだっため、”江戸しぐさは嘘”と言われているのです。

こぶし腰浮かせの疑問・反論

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船で人のために席を詰めるという仕草であるこぶし腰浮かせに関しても、嘘だと言われています。そもそも江戸時代の渡し船には座席と言えるものがありませんでした。

そのため、腰をこぶしひとつ分浮かせて移動するというのは合理的ではないのです。座席のない揺れる船の上で、腰を浮かせただけで移動するのはとても大変なことでもありました。

船の上でなくても、例えば茶屋で長椅子に座る際に席を詰めるなどといった行為もなかったと言えます。くつろぐために座る茶屋で、お茶を置くスペースも作らないというのはおかしな話なのです。

時泥棒の疑問・反論

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続いては、時泥棒の嘘説について解説します。現代では時も”時は金なり”などの言葉があるように、時間は基本的に誰にでも平等に与えられ、大切にされています。

しかしそれは、時計が存在する現代だからこそ言える考えだというのです。そもそも江戸時代に時計はありませんでした。十二支で時間を表現してはいましたが、明確な時間意識はありません。

そのため、そもそも「時間を奪う」という感覚があったかどうかさえ定かではないという意見があるのです。

喫煙しぐさの疑問

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続いては喫煙しぐさについてです。こういったマナーは当たり前に江戸時代にもあってほしいと思ってしまいますが、実際のところ嘘である可能性が高いと言われています。

そもそも『喫煙禁止』という張り紙があったかどうかも定かではなく、江戸時代の料理屋ではどんな席にも喫煙盆(現代でいう灰皿)が置かれていました。

そして「火事と喧嘩は江戸の華」という江戸っ子文化に「喫煙しぐさ」という江戸しぐさはそぐわないのではないか?という考え方があるのです。

イラスト付きで見るその他の江戸しぐさの種類一覧

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ここでは、先ほどご紹介した4つの江戸しぐさだけでなく、他にも知られている江戸しぐさをイラストとともにいくつかご紹介していきます。

肩引き

まずご紹介する江戸しぐさは『肩引き』です。肩引きとは傘かしげによく似たしぐさで、道で人とすれ違う際に肩が当たらないよう、外側に肩を引き寄せてすれ違うことを言います。

もったい大事

続いては『もったい大事』という江戸しぐさです。もったい大事とは”もったいない精神”でものを大切にしながらなんども再利用して最後まで使い切ることを言います。

七三の道

続いては『七三の道』です。七三の道とは、道の真ん中を歩かずに端3割の部分を歩き、他の7割を他の人のために開けておくというしぐさです。

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