エホバの証人の輸血拒否問題!なぜ輸血がダメ?事件や判例もまとめ

かつてエホバの証人と言えば、輸血問題を巡り「人殺しカルト」として有名でした。しかし、実はこの事件をきっかけにインフォームドコンセントなどが制定されています。今回は医療界に大きな波紋を呼んだ輸血拒否問題についてまとめました。

エホバの証人が輸血を拒否するのはなぜ?

エホバの証人が輸血を拒否するのはなぜでしょうか?それにはエホバの証人の成り立ちを説明する必要があります。

エホバの証人はキリスト教系の新宗教、聖書は新世界訳聖書

エホバの証人は新訳聖書を経典とする宗教であり、キリスト教から派生した新宗教です。しかし、細かな教えはキリスト教と異なります。まず、天国・地獄は存在せず、代わりに神の王国があります。

神の王国はなぜか1914年にイエス・キリストが天に設立したそうで、選ばれた14万4千人の人が神の王国に行けるそうです。(14万4千人は1914年時点で定員を締めきっており、追加はないようです)

また、神・キリスト・精霊は同じ存在であるという「三位一体」も否定しており、エホバの証人にとって神は唯一エホバのみです。キリストもあくまで「神の子」でしかありません。

キリスト教系でも輸血を避けるのはエホバの証人だけ?聖書に書いてある?

エホバの証人はとにかく聖書の言葉を神の教えとして重んじています。そのため、聖書に書かれている言葉に対して色々な独自の解釈を加え、自分たちの守るべき規範としています。

新約聖書の中に「偶像に犠牲としてささげられた物と血と絞め殺されたものと淫行を避けていることです。これらのものから注意深く身を守っていれば,あなた方は栄えるでしょう。」という言葉があります。

ここから、偶像崇拝、血、淫行は避けるべきものであるという教えを見出し、輸血も避けるべきである!という結論に至ってしまったのがエホバの証人です。具体的に輸血NGの記載はありません。

エホバの証人は輸血を受けると不老不死になれなくなるため拒否する?

エホバの証人の根幹は「復活信仰」です。悪魔(サタン)の誘惑がはびこるこの世界を一旦浄化するため、神の軍勢によりこの世の終わり(ハルマゲドン)が訪れます。

その後、地上の全員を抹殺したうえで、神のお眼鏡にかなう人は「義者の復活」としてこの世に復活することができます。この「義者」に選ばれたくて信者は教えを守ろうとします。

なお、その後6,000年という途方もない試用期間があり、その間悪いことをしなかった人は楽園で永遠に生きられると信じられています。

エホバの証人は輸血を受けず死亡しても不老不死を手に入れることができる?

輸血を受けずに死亡したエホバの証人は神の教えを守った立派な人として「義者」に選ばれます。なので、彼らにとって現世の生は将来を見越したらほんのわずかなものでしかないのです。

聖書に書かれた(書かれていないことも)妄信的に信じる様は怖いものを感じますが、彼らにとっては何よりも聖書が一番正しいものです。聖書に殉じて生きることが至福なのです。

エホバの証人の輸血拒否による死亡が社会問題に?

エホバの証人の輸血拒否について世間で広く知られるようになったのは、信者の輸血拒否による死亡が相次いだためです。

事件①:エホバの証人輸血拒否事件

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1992年、立川病院でAさんの手術が行われた際、エホバの証人であるAさんは例え命の危険があっても輸血は絶対にしないでほしいと医師に対して相談していました。

しかし、手術中にAさんが危険な状態に陥ってしまい、命を救うためには輸血が必要不可欠と判断してAさんの同意を得ずに輸血を行います。結果、手術は成功しました。

ところが、自分の意志と関係なく輸血されたことは債務不履行、説明義務違反であるとして病院を相手どり裁判を起こしました。当時この事件は大きく取り上げられました。

エホバの証人輸血拒否事件は患者の自己決定権を尊重し、輸血を違法とした判例に

第1審では医師の判断に誤りがなく輸血は適切なものであるとの判例がだされましたが、最高裁では輸血は違法であるという判例がだされています。

いかなる時も輸血はしない、というAさんの意志に反して輸血を行うことは人格権の侵害であると判断したためです。この事件は以後の判例に大きな影響を与えています。

今回の場合、手術を行う場合には輸血が絶対に必要となるケースがあることを説明し、手術を行うかどうかAさんに決めてもらうのが正しい処置である、という判例が出ました。

事件②:大ちゃん事件

1985年、当時10歳の大ちゃんが交通事故にあい、救急病院に受け入れられました。大腿部を大きく損傷しており、大量出血のため一刻も早い輸血が必要不可欠な状況でした。

しかし、一家そろってエホバの証人であったため、例え命を落としても輸血なしで治療してほしいと依頼。結果、懸命の処置も空しく大ちゃんは10歳という若さでこの世を去りました。

担当医師は後に「搬送直後に輸血を行ってさえいればほぼ確実に救えた命である」と話しており、痛ましい事件として当時大きな波紋を呼びました。

大ちゃん事件はドラマ化「説得――エホバの証人と輸血拒否事件」

大ちゃん事件はビートたけし主演でドラマ化されています。ドラマでは子供の命を救いたい、しかし心のよりどころである信仰に背くこともできない、という両親の葛藤が描かれています。

最終的に両親は信仰をとって大ちゃんを死なせてしまいますが、きっと一生その時の判断が本当に正しかったのか自責の念にさいなまれながら生きていくのではないかと思わせるような内容です。

事件③:エホバの証人信者の妊婦が帝王切開手術中に死亡

エホバの証人の妊婦が帝王切開を行行いました。子供は無事取り上げられましたが子宮の収縮が十分でないため起こる弛緩(しかん)性出血などで大量出血し、数日後に死亡しました。

事件①の判例により、本人の意思を尊重しない医療行為は法律に反するという司法の見解が出たことから、事前に輸血を行わないために発生する問題は免責である旨を病院と交わしています。

大量出血時に家族へ再度輸血の許可を求めていますが、本人の意思を尊重するという判断を受け入れ、輸血がなされることはありませんでした。

事件④エホバの証人信者の家族が輸血拒否、65歳女性が手術中に死亡

青森県立中央病院(青森市)で2011年4月に65歳の女性が手術を受けましたが、手術中の輸血を家族が拒否しました。結果、手術は途中で打ち切られ、女性は死亡しました。

こちらも事件①の判例を考慮し、自己決定権を優先させています。今でもこのような輸血拒否による死亡は稀に発生しています。

エホバの証人の輸血拒否に対する病院受入体制の問題

こうした事例を受け、病院側ではエホバの証人を治療する際の体制・方針を決定する必要に迫られました。

病院はエホバの証人に輸血拒否に対しあらかじめ方針を策定し公開する必要がある

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エホバの証人は2009年時点で全国に約21万人存在します。これら信者の治療に携わることは十分に考えられるため、病院側は緊急時の受け入れで迅速な対応を行えるよう準備しておく必要があります。

そのため、病院側でエホバの証人に対して輸血拒否の方針を策定し、これを公開する必要があります。

多くの病院がエホバの証人の輸血拒否に対応するためのガイドラインを公開

エホバの証人に対して多くの病院が輸血拒否に対応するためのガイドラインを策定し、公開しています。

病院側としては患者の命を最優先して輸血を行ったがために後々裁判で敗訴するということがあってはならない訳ですから、常日頃からこういったことをマニュアル化しています。

とはいえ、常にエホバの証人の希望を最優先することは難しいと言えます。特に輸血拒否が難しいと判断される事例をご紹介します。

エホバの証人の輸血拒否に関する難しいケース①:加害者がいる場合

加害者がいる事故等の場合、輸血拒否により死亡してしまった場合加害者の罪が重くなってしまいます。また、故意に怪我を負わせたのではない限り、加害者の自責の念は大変なものでしょう。

そうした事もあり、加害者がいるケースでは輸血同意書なしに輸血を伴う治療を行う前提としている病院がほとんどです。

エホバの証人の輸血拒否に関する難しいケース②:本人の意思が確認できない場合

本人が望んで輸血を拒否する場合、先の判決でも出ている通り自己決定権を尊重すべきであるというのが司法の見解です。しかし、治療時に本人の意思が確認できない場合があります。

その場合は例え家族が輸血を拒否したとしても輸血を伴う治療を行うのが一般的です。家族が死を受け入れたとしても本人は生きたいと願っているかもしれないのですから。

輸血が緊急を要さない場合、エホバの証人の組織である団体に事情を説明し、受け入れ先の病院を探してもらうのが一般的です。

エホバの証人の輸血拒否に関する難しいケース③:小児で判断能力がない場合

小児で判断能力がないと判断された場合も、ケース②と同様に家族(親権者)の同意なく輸血を伴う治療を行うこととしている病院がほとんどです。

こちらも緊急を要する場合でなければ新たな受け入れ先を探してもらうこととするのが一般的です。

エホバの証人は献血もできないの?

エホバの証人は献血することができません。血は「一度体から離れたら地面に捨てるもの」であるからです。

輸血を拒否するということは輸血という医療行為自体エホバの証人にとってはよろしくないものなので、よろしくない医療行為に加担することはできない、というのもあるのでしょう。

エホバの証人は輸血を受けても排斥されない?

ただし、輸血拒否はあくまで「規範」であり、それを破ったからと言って排斥(破門)となるわけではありません。輸血が必要になったら死を選べ、と強制することはありません。

エホバの証人の感覚は神風特攻隊に近いものがあるのではないでしょうか。「お国のために死す」ことが彼らの誉れであり、特攻できずに生き残ってしまうことは恥と考えていました。

エホバの証人も信仰のために死すことが誉れであり、輸血をしてまで生き残ってしまうことは恥、と思っているのかもしれません。戦時中の兵隊に近い洗脳具合と言えます。

エホバの証人はセックスも禁止?性行為が一切認められない?

エホバの証人は原則婚姻前の性行為が認められていません。婚前性交は汚れた行為とされています。

しかしこちらも婚前性交を行ったからと言って排斥になるというレベルの禁足事項ではなく、どちらかというと校則の「不純異性行為禁止」に近いものがあります。

輸血拒否に関するエホバの証人の言い分

輸血拒否事件は明らかに命を危険にさらす行為であり、聖書は人を殺すのかと思うのが当然の反応ですが、それを問うと必ずと言ってよいほど言われる彼らの言い分があります。

それはC型肝炎です。ちょうど輸血拒否事件が話題となったころ、C型肝炎の大きな感染源が輸血であることが明らかとなりました。それにより、血液製剤を利用した無輸血治療が広まります。

これをエホバの証人は鬼の首を取ったように「それ見たことか、エホバはこのことを警告していた(そんなことどこにも書いてないですが)のだ!」と声を大にして叫んでいます。

エホバの証人はなぜしつこく勧誘に来るのか?

日中時間帯によく家にいらっしゃる方はエホバの証人の被害にあわれているかもしれません。断ってもしつこく勧誘してきますが、なぜんなにも熱心に活動を行っているのでしょうか?

冒頭でも記載しましたが、復活前に一度生きとし生けるものすべてを抹殺するハルマゲドンという一大イベントが発生します。この発生条件が「世界中の全ての人に聖書の教えを伝え終わる」ことなのです。

日々人口が増え続け、今も新たな命が絶えず誕生し続けているため普通に考えれば分かりそうなものですが、彼らはいつかすべての人に教えを伝えることができると信じ今日も歩き回っているのです。

エホバの証人の輸血拒否に関するまとめ

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今回はエホバの証人の輸血拒否についてまとめました。判例を元に今ではどの病院もエホバの証人に対する受け入れ方針が完備しており、トラブルになることは少ないようです。

他人に迷惑をかけない分には信仰に殉じたとしても本人の意思ですから病院側も判例から判断するしかないのです。しかし、医師から見ると受け入れが難しい人たちであることには間違いありません。

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