逝っとけダイヤとは?京急の実例や逝っとけ宣言、実際の動画も! おもしろ

逝っとけダイヤとは?京急の実例や逝っとけ宣言、実際の動画も!

逝っとけダイヤは、鉄道運行におけるダイヤの乱れが発生した際、とにかく力ずくででも運行を続行して客を運ぶ事を優先し、強引にダイヤの流れを戻していく職人技。本家は京急といわれ、発動時には逝っとけ宣言が行われます。その他西武、小田急、名鉄でも同様の行動が見られます。

目次

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逝っとけダイヤとは?

逝っとけダイヤとは、鉄道運行において人身事故やその他の事情によってダイヤの乱れが発生した際に、とりあえずのその場しのぎ的に行われる特殊な運行方式を表す、いわゆる鉄道に関連するスラングです。

その場しのぎ的とはいえ、逝っとけダイヤとは熟練された鉄道員達の職人技的とも曲芸的とも言われる緻密な技術と経験にもとづく即時の対応力と判断力から成り立つ特殊スキルの様なものなのです。

そのため、鉄道ファンの間では「逝っとけダイヤ」は一種のエンターテイメントとして親しまれており、実際に発動された際には様々なドラマを生み出し、それを知るものにある種の感動すら呼び起こすのです。

ダイヤが乱れた時に鉄道会社が行う対応方法の一つ

通常の場合、人身事故やその他の事情によって、鉄道に遅れが発生し、ダイヤの乱れが発生すると、一時運行を停止しトラブル解決の後に再び運行を再開するといった対応が一般的です。

分刻みで緻密に決められた鉄道のダイヤは一箇所で乱れが発生すると、その乱れが波及していき、混乱を起こし収拾がつかなくなります。通常の場合は、混乱を回避するため、時間をずらした上で仕切り直しをするのです。

しかし、逝っとけダイヤとは客を運ぶ事を最優先し、乱れたままでもとりあえず鉄道を動かしてしまい、熟練鉄道員達によるフレキシブルな調整によって、力技で立て直してしまうという職人芸の様な対応方法なのです。

これは、鉄道本来の目的であるいかに客を目的地に短時間で運ぶかという面をまさしく体現しており、この対応が出来るか出来ないかで鉄道会社としての価値が大きく変わると感じる人も多数いる様です。

もちろん、正確にダイヤ通りに運行を続けられるに越したことはありませんが、いざダイヤが乱れてしまった時のその後の対応にこそ、その鉄道会社独自の個性が表れてくると思います。

そんなダイヤが乱れた後の対応の中でも「逝っとけダイヤ」はかなりアグレッシブな方法であり、なおかつ鉄道会社の本来の目的を何が何でも達するというプライドと気合いを含んだ対応方法だと言えます。

語源は「とりあえず行けるとこまで行っとけ(逝っとけ)」

逝っとけダイヤの語源は「とりあえず行けるとこまで行っとけ(逝っとけ)」だと言われています。いつ頃から、誰が言い出したのかは不明ですが、一見するとヤケクソの様に見えるその力技的運行をよく表しています。

逝っとけというと何となく危険な香りもしますが、プロ集団による高い技術に支えられた荒技なので、むしろいかなる時でも客を目的地に送り届けるというプライドと気合いを同時に表現したネーミングとも言えます。

京急でよく発動される逝っとけダイヤ

逝っとけダイヤとは主に京急(京浜急行電鉄)にて発動され、京急の熟練されたマンパワーの象徴の様に語られる特殊スキルともいうべき運行方法です。

JR東日本と直接競争関係にある京急では、歴史的にその高い運行技術が培われており、運転主任という京急独自の役職が各信号扱所に配置され、運輸司令の指示の下に、信号やポイントの切り替えを手動で行っています。

この歴史的に熟練された職人集団の存在が、イレギュラーなトラブル発生時であっても、その時の状況に応じた最適な対応を即時の判断で行うという職人技「逝っとけダイヤ」を支えているのです。

京急はとにかく客の輸送を重視、他社は通常ダイヤで戻すことを重視

トラブルで遅れが生じた場合、他の鉄道会社では混乱を避けるためにいったん運行を停止してでもダイヤの乱れを正す事を優先するのに対して、京急では客の輸送を最優先として「逝っとけダイヤ」を発動します。

その結果、京急電鉄では「とにかく何があっても乗れば目的地に着く事ができる」という鉄道が本来最優先すべき機能を完全に実現しており、乗客に多大な安心感と満足感を与え、京急の高い人気に繋がっています。

逝っとけダイヤを代表例として、京急では他社とは明らかに違う独自の運営方法がいたるところに見られ、これは他社には真似できない「KQクオリティ」などと呼ばれ、鉄道ファンを中心に感動すら与えるのです。

「逝っとけダイヤ」発動の合図、「逝っとけ宣言」とは

逝っとけダイヤとは行動を示すスラングであるため、知識のない人にはその発動のタイミングを知ることは難しいでしょう。しかし発動を知る事が出来る合図「逝っとけ宣言」を聞き取る事で知る事が可能です。

その合図「逝っとけ宣言」とは、駅のホームや列車内で放送されるアナウンスにある種のニュアンスが含まれている事を指しこれを聞いて空気を読み「逝っとけダイヤ」が発令されている状況を感じ取るというものです。

「逝っとけ宣言」では通常運行時の駅アナウンスとは明らかに違うテンションで、簡潔に勢いよく変更の情報が乗客に伝えられます。以下にそのニュアンスを含む放送の一例が紹介されています。

運転は再開いたしました。(←ここ強調)
なお、これより先、列車の遅れ、行き先、待ち合わせ等変更がある場合がございます。
ご了承ください。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけしております。
電車は運転を再開しております。(←大事なことなので2回言いました)
なお、遅れが出る見込みですので、ご了承ください。

(引用:ニコニコ大百科)

逝っとけ宣言がわかれば、エンタメとして楽しめる

「逝っとけ宣言」を感じ取る事で、その裏では膨大な情報量が飛び交い、混乱が巻き起こっている事が想像でき、その状況を熟練された鉄道員達がその混乱をいかに収拾していくのかを見て楽しむ事ができます。

これこそが、「逝っとけダイヤ」を一大エンターテイメント足らしめるのです。「逝っとけ宣言」が出たとわかる様になれば、京急をより楽しく、また緊急時にも快適に利用できます。是非意識して聴いてみてください。

もしも、京急利用時に逝っとけ宣言がなされ、「逝っとけダイヤモードに入った!」と知る事ができたなら、その瞬間に何とも言えない高揚感が湧き上がるはずです。

京急の「逝っとけダイヤ」は国から表彰を受けたことも?

以上の様に主に京急にて発動される「逝っとけダイヤ」はその熟練された職人技と独特なテンションによって知る人ぞ知るエンターテイメントにまで昇華し、鉄道ファンの心を沸き立たせます。

そんな一部ファンのみに賞賛されてきた「逝っとけダイヤ」でしたが、2015年には国土交通省鉄道局から毎年表彰される「日本鉄道賞」の「高度な安定輸送実現」特別賞を京急電鉄が受賞しました。

これは、ある意味で「逝っとけダイヤ」が国に認められたとのとほぼ同義であり、「逝っとけダイヤ」がまさに国を支えるマンパワーの象徴として認められた瞬間だと言っても過言ではないでしょう。

 京急電鉄は2015(平成27)年10月、「日本鉄道賞」において「高度な安定輸送実現」特別賞を受賞しました。

その選考理由は「列車の遅延を最小限に抑制した、わが国で最高水準の安定輸送を着実に提供してきたこと」「ハード面の改善と工夫を長期にわたって積み重ねてきたことに加え、『人間優位』の運行管理思想を社内の隅々まで徹底してきたこと」というものでした。

(引用:乗りものニュース)

逝っとけダイヤの裏で飛び交う「レールウェイラジオ」

逝っとけ宣言放送の裏ではまるで戦闘機の航空無線の様、航空管制の様とも表現される情報量の膨大な輸送司令から送られる指示無線が飛び交っており、その情報量の多さは「レールウェイラジオ」とも呼ばれています。

レールウェイラジオは、一部鉄道マニア達が偶然聞き取ってしまった内容が時にネット上にアップされる事があり、その膨大な情報量に度肝を抜かれる事があります。

また、このるレールウェイラジオの内容を聞くと現場で巻き起こる混乱とそれに対応していく熱量を直に感じる事ができます。ネット動画にも多数上がっているので興味がある方は是非聴いてみてください。

京急の「逝っとけダイヤ」の実例は?

「逝っとけダイヤ」という語句が生まれた鉄道会社でありその本家ともいうべき京急電鉄での「逝っとけダイヤ」発動時に巻き起こる様々な変化、その裏側なども紹介していきます。

また、京急での実例として先ほど紹介した「レールウェイラジオ」の無線を元にしてその時何が起こっているのかも簡単に紹介していきます。

列車の行き先、待ち合わせ、種別、編成両数、列車の入ってくる方向も変更

「逝っとけダイヤ」が発動すると、これまで整然と行われていた行動が一気に入り乱れる様に様々な変化が巻き起こります。列車の行き先は凄まじい勢いで変更に、待ち合わせのホーム、運行種別なども適時変更されます。

また、通常とは違う車種、編成両数、列車がホームに進入してくる方向すらも変化が見られ、その状況はある意味でカオス状態であり、まさに興奮のるつぼと化していくのです。

逝っとけ宣言が飛び交う中、列車幕がルーレットとの様に変更されていく様子を乗り馴れた乗客達が注視する様子は、やはりある種の特別なイベント感が漂い、心が沸き立つ感があります。

運転士も車掌も知らない逝き先

「逝っとけダイヤ」がひとたび発動されると、運輸司令が全体の状況を判断し、長年の経験の基にその場のインスピレーションなども駆使して最適な輸送手順を組み立て、数々の指示を各列車や信号扱所へ発令されます。

まるで難解なパズルを組み立てる様に膨大な指示が入り乱れ各部署、各列車へと送られるため、場合によっては運転士や車掌も自分の列車がどこへ行くのかを把握していない場合すらもあるのです。

例えば当初は〇〇駅へ向かえと指示されたものが次には停車して通過待ちの指示に切り替わったりなどするためどこへ行き着くのかはわからないのです。現場はまるで鍛えられた兵士の様にその指示を的確にこなします。

実際の指令①:京急蒲田駅停車中の下り普通車への指令

続いて、実際に逝っとけダイヤ発動時の「レールウェイラジオ」の内容についても紹介していきます。まずは京急蒲田駅停車中、下り普通車への指令無線です。

「あっ、あなたの車はぁー。えー蒲田止まりにして上り回送!上り回送で平和島まで行っていただけますかぁ?逆出発で!えーお客様降ろしましてぇー、上り、あ、降りました?じゃあ逆出発で平和島まで回送してください。で、平和島から普通車で出発してください。ゲホッ(咳の音)」

(引用:電池@ネット)

蒲田駅から逆に出発して平和島へ向かい、そこから普通車で運行せよという指令が下っています。これは平和島からはさらに折り返し、各停で品川駅に向かうという指示かと思われます。

実際の指令②:京急鶴見駅へさしかかる上り普通車への指令

さらに、こちらも同じ「逝っとけダイヤ」発動時の「レールウェイラジオ」の内容になります。ある「快特(京急の優等な運行種別の名称)」を先に通すための指示です。

あなたの車は次の京急鶴見で快特の通過待ちをします。信号の指示に従ってください。

(引用:ニコニコ大百科)

この指示はすぐ後ろから来ている「快特」が2駅背後に迫ってからの指示でした。逝っとけダイヤ発動時の混乱ぶりがわかる指令です。しかしこれが逝っとけダイヤの醍醐味でもあるのです。

実際の指令③:泉岳寺を出発した下り快特への指令

あなたの車は併合できませんので、8両で出発してください。

(引用:ニコニコ大百科)

併合とは列車を結合して両数を増やす事です、京急電鉄は分割併合を度々行いますが、逆にこの場合は状況によってそのまま出すという場合です。こちらは本来12両編成のところが8両のまま出発せよとの指示です。

「逝っとけダイヤ」の動画は?

上で紹介した「レールウェイラジオ」の内容が入った動画があるので紹介します。これを見ると逝っとけダイヤ発動時の現場の混乱ぶりがよく伝わるかと思います。

混乱ぶりもさる事ながら、この状況に対応してなんだかんだ運行してしまうのが京急が「KQクオリティ」と賞賛される所以でもあります。現場の士気の高さも伝わってくる動画です。

客は乗車中に寝たり乗り間違えたりすると危険

以上の様に「逝っとけダイヤ」発動時には行き先などが度々変更になる事が伝わったかと思います。そのため、乗客は「逝っとけダイヤ」発動時に寝ていたりすると大変危険な事になります。

目が覚めると何故か羽田空港のエアポートターミナルにいたり、工業地帯のど真ん中に送られたり、三浦半島の果てまで飛ばされたり、さらに下手をすればそのまま車両基地に運ばれる事もあるとかないとか。

また、同様の意味で乗り間違えも大変危険です。逝っとけダイヤ発動中はある意味なんでもありのカオス状態なので、乗っている電車が最終的にどこにたどり着くのかは誰にもわかりません。

京急で「逝っとけダイヤ」ができる理由

「逝っとけダイヤ」の本家本元は京急電鉄であることはすでにお伝えしました。ここまで紹介した様に逝っとけダイヤとは気合と長年の経験による緻密な即時判断の合わせ技であり、生半可な鉄道会社では実施不可能です。

逝っとけダイヤとは京急独自の「KQクオリティ」により支えられる熟練技なのです。ここでは、京急電鉄になぜ「逝っとけダイヤ」が発動できるのかの理由についてさらに掘り下げて解説してみたいと思います。

京急はポイント切り替えや出発信号の管理が未だに運転主任による手作業

現在では信号やポイントの切り替えはほとんど機会管理によって行われています。しかし、京急電鉄には運転主任という信号扱所で、ポイントや出発信号の操作を手動で行う担当者がいます。

路線上を走っているすべての列車の管理を行う運輸司令から、4つの運転区と沿線に25箇所ある信号扱所に指示が伝えられます。その指示を元に信号扱い所の運転主任が手動で信号とポイントの切り替えを行います。

京急が貫くこのシステムと日頃から手動で運行する事で鍛えられた技術があるからこそ、トラブルの発生時に臨機応変な対応が可能となり「逝っとけダイヤ」という神業スキルの発動を可能にしているのです。

京急の歴史的な背景が底力を生んでいる

また、京急電鉄は歴史的に客をいかに目的地へ最短時間で運ぶかという点に強いこだわりを持っている鉄道会社です。JRがまだ国鉄であった時代から競争相手とし、いかに客を取るかを至上命題としてきたのです。

この歴史的な背景こそが、緊急時での京急の火事場の馬鹿力的なとんでもないクオリティを生み出している可能性は高いといえるでしょう。ここでやらずに何の存在価値かという気迫すら感じる事ができます。

そして、さらに凄いのが経営陣から現場の運転士、車掌、駅員に至るまでその気概が共有されている点です。京急の鉄道員達の様々な仕事ぶりを見ているとわかりますが、そのプロ意識には並並ならぬものがあります。

客もプロで混乱が少ない

また、京急で「逝っとけダイヤ」が発動できる大きな理由の一つとして、京急を普段使う、沿線沿いの住人達もまたそのシステムを良く知るプロであるという事もあげなくてはならないでしょう。

普段から京急に乗り慣れた沿線の住人達は、その経験によって「逝っとけダイヤ」発動時にどの様に立ち回れば良いかを熟知していると言われています。

京急の常連客達は、「逝っとけダイヤ」発動時に行き先が度々変更になる事や、通常と全く異なる運行が行われる事もよく知っているため、逝っとけ宣言が始まるや、耳をすませ、行き先を示す方向幕を注視します。

その情報をそれぞれが正確に理解し、全く無駄なく行動します。通常であれば大混乱が発生していてもおかしくない変更の嵐の中でも、何事もなかったかの様に動き、淡々と目的地へと向かうのです。

逆に言えば、客もまた熟練されプロにならなくては京急を乗りこなす事はできないとも言えるでしょう。京急ではその長い歴史の中で熟練された鉄道マン達が育つと共にそれを利用する客達もまたプロへと育ったのです。

以上が京急で「逝っとけダイヤ」が発動できる理由です。逝っとけダイヤとは京急の熟練された鉄道のプロ達と、それをよく理解し高め合って来たプロの客達とが共同で作り上げるエンターテイメントなのです。

京急以外の「逝っとけダイヤ」は?

しかし、時には京急以外の私鉄でも「逝っとけダイヤ」を発動させる事があります。東京北西から埼玉県南西部にかけて路線を有する大手私鉄西武鉄道。東京、神奈川に路線を持つ小田急などの関東勢。

さらに、名古屋を中心に愛知県、岐阜県に基盤を持つ名鉄こと名古屋鉄道でも逝っとけダイヤに類する「逝けばわかるさダイヤ」を発動させる事で有名な私鉄です。順番に紹介していきます。

西武の「逝っとけダイヤ」

西武鉄道での逝っとけダイヤについて紹介します。西武では京急ほど派手に交通整理を行うわけではありませんが、人身事故などが発生すると様々なウルトラC技を繰り出してきます。

西武もまた京急と並び、関東では最強クラスの鉄道会社だと称されており、ちょっとやそっとの災害では運行を休止せず、他の鉄道が遅れを出している中西武だけは平常運転というケースもよく見られます。

具体例を挙げていくと、西武池袋線の場合は、東京メトロや東急電鉄の車両を西武の池袋駅へ入線させる方法をとったり、準急行を練馬駅から石神井公園駅までの区間の各停を以前の準急の停車駅に変更したりなど。

また、急行を臨時停車させるなどの変更や、トラブル発生区間によって所沢駅で折り返した事例などが見られます。この様に様々な特例をかなり力技で発動するのも西武鉄道の特徴です。

西武新宿駅ではアクロバット的な運用に定評があり、ターミナルのホームが2面3線でありながら、毎時最大40本の発車本数を誇る事から1部からは「常時逝っとけダイヤ」とも言われています。

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